コンバージョン偏差値スキャナーコラム

2026.09.12 約8

20業種603サイトを診断したら、高齢者向け業種ほどスマホのボタンが押しにくかった

実際に診断した603サイトのモバイル実測データから、タップ領域(ボタン・リンクのサイズと間隔)の実装状況を業種別に集計しました。介護・医療・整体という高齢者が主要顧客層の業種ほど、指で押しにくいサイトが多いという逆転が見つかりました。

スマホでサイトを開いたとき、ボタンをタップしたつもりが隣のリンクに飛んでしまった、という経験はないでしょうか。原因の多くは文章力でもデザインセンスでもなく、単純にボタンが小さすぎる、あるいは近すぎるという物理的なサイズの問題です。

この記事では、キーボード入力のしやすさ(フォームの自動入力対応)ではなく、指で押せるかどうか——ボタンやリンクのサイズと間隔——だけを扱います。入力のしやすさ自体は別記事です。

推測ではなく実測で確かめるために、20業種603サイトを同じ基準で診断しました。この記事の数字はすべて、2026年9月時点・603サイトの実測値です。

603サイトの実測:4割以上が推奨サイズ未満

診断では、各サイトのスマホ表示を実際にレンダリングし、リンク・ボタン・送信ボタンなど「押せる要素」を1サイトあたり最大120個までサンプリングして、幅・高さのどちらかが36pxに満たないものを「小さいタップ領域」としてカウントしています。Appleは44pt、Googleは48dpを推奨サイズとしていますが、それより緩い36pxという基準ですら、これだけ引っかかりました。

603サイトのうち、モバイル計測が正常に取得できたのは600件でした。この600件について、「押せる要素のうち何%が小さいタップ領域だったか」を集計しています。1サイトあたり最大120個までという上限を設けているのは、リンクの多いサイトほど分母が膨らんで比率が実態より低く出るのを避けるためです。主要な導線を優先的にサンプリングした上での比率と考えてください。

600サイトのタップ領域実測。中央値44%、4割以上が58%、6割以上が25%

指標 件数 / 割合
モバイル計測が取れたサイト 600件
小さいタップ領域の比率(中央値) 44%
比率が4割以上のサイト 347件 / 58%
比率が6割以上のサイト 148件 / 25%

表① タップ領域の実測サマリー(600サイト)

中央値44%というのは、押せる要素のうち半分近くが推奨サイズに満たないサイトが、真ん中どころだということです。さらに347件、全体の58%は、押せる要素の4割以上が小さいタップ領域でした。148件、4件に1件は、6割以上が小さいタップ領域という状態です。

これは一部の作り込みが甘いサイトの話ではありません。過半数のサイトで、スマホから訪れたユーザーの半分近くの操作が、狙ったところを押しにくい状態に置かれているということです。

しかも、この数字は603サイトすべてに対して同じ基準・同じサンプリング方法で計測した結果です。業種や企業規模による測定条件の違いはなく、純粋に「押せる要素がどれだけ小さいか」だけを見た数字だという点は押さえておいてください。

なぜこれが起きるのか

原因の多くは、デザインの手抜きではなく、PC表示をそのまま縮小した結果です。PC版では十分な大きさに見えるテキストリンクや、横に並んだナビゲーションの項目、フッターにびっしり並んだ関連リンクは、画面幅が狭くなっても文字サイズや行間だけを保って詰め込まれがちです。結果として、リンクの見た目の文字は読めても、実際にタップできる当たり判定は数ミリ四方しかない、ということが起こります。

指先の接触面積は個人差はあってもおよそ8〜10mm前後と言われています。36px(多くのスマホで概ね9mm前後に相当)を切るボタンは、狙って押すにはすでに厳しいサイズです。

「読める」と「押せる」も別の話

これは1本目の記事で書いた「書いてある」と「読める」は別のこと、という構図とよく似ています。文字として画面に表示されているかどうかと、機械(あるいは指)がそれを意図した通りに扱えるかどうかは、別の階層の問題だからです。

タップ領域が小さいまま公開されがちな場所には、共通のパターンがあります。

いずれも、意図的に小さくしているわけではなく、PC版のレイアウトをそのままスマホ幅に流し込んだ結果として生じています。

介護・医療・整体という「高齢者向け業種」ほど、タップ領域が狭い

ここからが、今回の診断で最も意外だった結果です。

来店・来院が売上に直結する業種の中でも、主要な顧客層が高齢者に偏る3業種——介護・福祉、医療・クリニック、整体・治療院——を取り出して集計し直しました。

高齢者が主要顧客層の3業種は、全体より小さいタップ領域が多い

集計対象 4割以上が推奨サイズ未満
全業種(600件) 347件 / 58%
介護・福祉/医療・クリニック/整体・治療院(90件) 59件 / 66%

表② 高齢者向け3業種と全体の比較

全体の58%に対して、この3業種では66%。母数90件の中で、8ポイントも高い数字です。年齢を重ねるほど、細かい視力の低下や指先の震え、操作の慎重さといった要因でタップ操作のハードルは上がっていきます。にもかかわらず、その顧客層を主要な対象とする業種のサイトほど、タップ領域が狭いという逆転が起きています。

「作り手」と「使い手」の年齢差

なぜこの逆転が起きるのか。断定はできませんが、構造として説明はつきます。サイトを作るのは制作会社やWeb担当者であり、多くの場合、実際にそのサイトを見て予約や問い合わせをする高齢の利用者本人ではありません。作り手にとって36pxのボタンは「押せて当然」の大きさに見えても、視力や手先の感覚が異なる利用者にとっては同じサイズには見えていない、という前提のズレです。

これは1本目の記事で見た「来店が売上に直結する業種ほど、構造化データが手つかず」という構図とも似ています。サイトを実際に使う人と、サイトの発注・制作に関わる人の間にギャップがあるほど、利用者側の事情が反映されないまま公開されてしまう、という同じパターンがここにも表れているように見えます。

押し間違えたときの行動も、年齢層によって差が出やすい部分です。若い利用者はタップに失敗してもすぐに指を戻して押し直しますが、操作に慣れていない利用者ほど「反応しない」「別のページに飛んだ」といった予期しない挙動に戸惑い、そのままサイトを離れてしまう傾向があります。ボタンが小さいこと自体よりも、押し間違えたあとの離脱のしやすさこそが、業種間の差を広げている可能性があります。

自社が高齢層を主要な顧客とする業種であるなら、このボタン設計は他業種以上に見直す価値があります。ここを整えるだけで、電話予約やお問い合わせフォームへの動線を実際に「押せる」ものにできます。

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自社サイトをどう判断するか

自社のサイトが該当するかどうかを確認する手順です。

1. スマホの実機で、自社サイトの主要な導線を実際にタップしてみる。 電話番号のリンク、フォームの送信ボタン、ナビゲーションの各項目、フッターのリンク群。PCのブラウザでスマホ表示を模してもある程度分かりますが、実機のほうが指の感覚と一致します。

2. 特に注意すべきは「テキストだけのリンク」と「詰め込まれたアイコン」。 ボタンとして枠や背景色がついていないテキストリンクは、行間や余白が詰まっていると当たり判定が文字の高さぶんしかないことがあります。逆にSNSアイコンや検索アイコンを横一列に並べた箇所は、見た目の間隔以上にタップ領域同士が近接しがちです。

3. 高齢層が主要顧客なら、推奨サイズより一段階余裕を持たせる。 業界標準の44px前後を最低ラインとしても、介護・医療・整体のように利用者の年齢層が高いサイトでは、48px以上、かつボタン同士の間隔を8px以上空けることを目安にすると安全です。

4. 直しやすい場所から着手する。 タップ領域はCSSのpaddingmin-heightを調整するだけで直せることが多く、デザインを作り直す必要はほとんどありません。優先順位をつけるなら、電話番号のリンク、フォームの送信ボタン、ナビゲーションの順で見直すと、少ない工数でCVに近い導線から改善できます。

5. 制作会社への伝え方も具体的に。 「タップしやすくしてください」だけでは、どこをどう直すかが伝わりません。「ヘッダーの電話リンクとフッターのお問い合わせボタンを、高さ48px・上下左右8px以上の余白を確保する形に直してほしい」というように、対象の要素と数値をセットで伝えると、作業範囲が見積もれるので実際に直りやすくなります。

こうした個別の見直しは、狭いタップ領域を1つずつ直すたびに小さな改善が積み上がる作業です。逆に言えば、一度に完璧を目指す必要はなく、CVに直結する導線から手をつければ、それだけで体感できる差になります。

自社の数値がどのあたりに位置するかは、感覚だけで判断せず、実測で確認するのが確実です。私たちが公開しているコンバージョン偏差値スキャナーでは、URLを入力するだけで、この記事で使った603サイトと同じ基準の診断を受けられます。タップ領域を含むUI/UXの項目に加えて、SEO集客・サイト基盤・LLMO(AI検索対策)の4軸50項目を採点し、同業種の中での偏差値として結果が出ます。登録は不要で、2〜3分で画面に表示されます。

業種別の総合スコアや、4軸それぞれの位置づけについては、業種別ベンチマーク総覧にまとめています。

まとめ

「押せるはず」という作り手の感覚と、実際に押せるかどうかは別の話です。まずは自社サイトの現在地を確認するところからです。URLを入れるだけの無料診断で、同業種の中での位置が偏差値で分かります。

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自社のホームページの急所は、どこか

この記事で触れた項目を含む4軸50項目を、URLひとつで採点します。結果はその場で表示。所要時間は2〜3分です。

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滝沢 哲平の写真

記事の監修

CROディレクター

2007年、Eコマースビジネスの立ち上げを機にWeb解析の世界に触れ、以降、サイト分析から改善アクションのPDCAを粘り強く回し続けた結果、1年で2億円規模の事業へと成長させる。

10年以上にわたり、中小企業から大企業まで累計100社を超えるBtoB企業のコンバージョン率改善(CRO)で成果を上げている。

近年はAIを活用した分析・改善業務の効率化と、生成AI検索時代のマーケティング戦略に注力。

この診断プログラムは、普段の有償コンサルティングで最初に確認している観点を、そのまま自動化したものです。採点基準と改善提案の文面を監修しています。

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