本記事の数値について 国内側は、20業種603サイトを同一基準で実測した2026年9月12日時点の診断データのうち、集計できた602サイトが対象です。ページに読み込まれたスクリプトからツールを判定したうえで、判定された84サイトすべてを2026年10月9日に実際のページで開き直し、製品を1件ずつ確かめました。海外側は前回の記事で扱ったマイクロソフトの報告(2009年)です。集計方法は調査方法と採点基準をご覧ください。
前回の記事で、マイクロソフトのような会社でも、試した改善案のうち狙いどおりに効いたのは約3分の1で、約3分の1はむしろ悪化させていたという報告を紹介しました。だからこそ、変更を「確かめる仕組み」が要る、という話でした。
では、国内のサイトはどれくらいその仕組みを持っているのか。A/Bテスト(2つの案を出し分けて結果を比べる実験)やパーソナライズ(利用者ごとの出し分け)に使われるツールを、CVSCAN Labが実測している20業種602サイトで調べました。
ツールを確認できたサイト
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国内20業種602サイト(2026年9月12日時点の判定を、10月9日に実ページで再確認)
確認できたのは602サイト中64サイト、10.6%
ページに読み込まれているスクリプトから、A/Bテストや出し分けに使われるツールを探しました。いったん84サイトが該当しましたが、文字列の一致だけでは別のものを拾っている可能性があります。そこで84サイトすべてを実際に開き直し、どの製品のスクリプトかを1件ずつ確かめました。
その結果、現役のツールを確認できたのは**64サイト、10.6%**でした。言い換えると、約9割のサイトでは、変更の効果を比べて確かめる道具を確認できませんでした。
確認できた製品は次のとおりです(1サイトで複数入っている場合があります)。
図① 確認できた製品とサイト数(64サイト中・重複あり。棒の長さは64サイトに対する割合)
業態で差がはっきり出た
診断ツールが判定した業態(サイトの成果の取り方)ごとに分けると、差がはっきり出ました。
図② 業態別のA/Bテスト・出し分け系ツールの導入率(業態は診断ツールの自動判定)
EC型は30サイトと数が少なく、1サイトで割合が約3ポイント動く点には注意が必要です。購入がその場で完結するEC型は、ボタンや文言の違いが売上の差として表れやすく、確かめる道具への投資を回収しやすい業態だと考えられます。一方、店舗・来院型は**302サイト中20サイト、6.6%**にとどまりました。業態とは別に業種で見ると、美容・サロン(33サイト)、士業(30サイト)、医療・クリニック(30サイト)では1件も確認できませんでした。
理由の一つとして考えられるのは、件数の少なさです。来店・来院がゴールのサイトは、問い合わせや予約の件数がもともと少なく、A/Bテストで差を見分けるのに十分な数が集まりにくい可能性があります。前回の記事で触れたとおり、比較実験には相当な訪問者数が必要です。道具を入れていないこと自体が、怠慢とは限りません。
3年前に終わったGoogle Optimizeのコードが残っている
確認の途中で、もう一つ見つかったものがあります。2023年9月にサービスを終えたGoogle Optimizeのコードが、まだ読み込まれているサイトが5件ありました。そのうち4件は、ほかのテストツールを確認できませんでした。
Google Optimizeは、無料で使えるA/Bテストツールとして広く使われていましたが、2023年9月30日に提供を終えています。コードが残っていても、もう何も動いていません。
問題はコードそのものより、計測やテストの仕組みが、3年以上見直されていない可能性があることです。同じページに、他にも使われていない計測タグが残っている可能性があります。
測り方が違う点
① 道具があることと、テストしていることは別です。KARTEやJuicerは、チャットやポップアップの出し分けのために入れる場合もあり、A/Bテストを回しているとは限りません。逆に、ここで数えていない方法(サーバー側での出し分け、ページの外で管理するツールなど)でテストしているサイトもあり得ます。
② 確認できなかったものを含めると、最大で17.1%です。9月12日に検出したが10月9日には確認できなかった16サイトと、A/Bテスト機能も持つヒートマップのPtengine(ヒートマップ目的の導入と区別できないため上の数には含めていません)を合わせると、最大103サイトになります。
③ 無料のヒートマップMicrosoft Clarityは数えていません。A/Bテストの機能はなく、またMicrosoft広告の計測タグ(UET)に組み込んで読み込む仕組みもあるため、ヒートマップの目的で入れたものか区別できないためです。
④ 母集団は大手から地域の店舗まで含みます。国内のサイト全体の縮図ではありません。
①は、数字を読むうえで最も大事な点です。この記事が示しているのは「確かめる道具を持っているサイトが約1割」であって、「テストを回しているサイトが約1割」ではありません。道具が入っていても使っていないサイトがあるため、実際にテストを回している割合は、これより低い可能性があります。
何から始めるか
前回の記事のとおり、優秀なチームでも改善案の3分の1は外れます。道具がないなら、確かめる習慣から始めることはできます。
- 自社のサイトに、Google Optimizeなど終了したツールのコードが残っていないか確かめる(制作会社に聞けば分かる)
- すでに入っているツールにA/Bテストの機能がないか確かめる(入っているのに使っていない場合がある)
- アクセスが最も多いページ(広告の着地ページなど)から、比較実験を1つだけ試す
- アクセスが少ないサイトは、変更を1か所ずつにし、変更日と前後の数字を記録する(大きな差を見分ける目安として)
- 悪化した変更は元に戻す
道具の有無にかかわらず始められる順
2つめの項目は意外と見落とされます。今回確認したツールの中には、チャットやポップアップ、ヒートマップの目的で入れて、テストの機能は使われていないものもあるはずです。新しく道具を入れる前に、すでにあるものを確かめるのが一番安上がりです。
まとめ
- 国内602サイトのうち、A/Bテスト・出し分け系のツールを実ページで確認できたのは64サイト(10.6%)。約9割では確かめる道具を確認できなかった
- 業態で差が大きく、EC型23.3%、リード獲得型13.8%、店舗・来院型6.6%。美容・士業・医療では0件だった
- 2023年に終了したGoogle Optimizeのコードが残るサイトが5件。計測の仕組みが見直されていない可能性を示すサイン
- 道具があってもテストしているとは限らない。確認できなかった分を含めても最大17.1%
- 新しい道具より先に、残っている古いコードと、入っているのに使っていない機能を確かめる
コンバージョン偏差値スキャナーでは、A/Bテストや行動分析のツールの有無も含めて50項目でサイトを採点し、改善の優先順位を示しています。URLを入れるだけで、最短60秒・登録不要で結果が表示されます。
出典:Ron Kohavi ほか「Online Experimentation at Microsoft」(2009年)






