広告の予算を増やしても、入札やクリエイティブを工夫しても、CPA(顧客獲得単価)が思うように下がらない。そういう相談が、ここ数年で明らかに増えました。筆者が100社を超える企業のCRO(コンバージョン率改善)を支援してきた経験では、その原因の多くは広告そのものではなく、広告の先にあるLP(ランディングページ)と、申込みまでの導線にあります。
このガイドでは、CPAが上がりやすくなっている市場の構造を公的な数字で確かめたうえで、CPAの分母であるCV数を増やす「LP側の改善」の考え方、CVRを上げる4つの型、そしてAIによって実装の壁が消えた今のABテストの始め方を整理します。広告運用の話ではなく、広告の着地先の話です。
広告を変えてもCPAが下がらない理由:市場全体で起きていること
「うちだけCPAが上がっている」と感じている担当者は多いのですが、同じことは市場全体で起きています。背景は3つあります。
ネット広告費は総広告費の過半数になり、同じ枠に予算が集まり続けている
電通の「2025年 日本の広告費」によると、2025年の日本のインターネット広告費は4兆459億円で、前年から10.8%(3,942億円)増え、推定を始めた1996年以来初めて4兆円を超えました。総広告費8兆623億円に占める構成比は50.2%で、こちらも初めて過半数に達しています。総広告費そのものも2021年から5年連続で成長し、4年連続で過去最高を更新しました。
重要なのは、ネット広告の媒体費の88.7%(2兆9,352億円)を占める運用型広告(検索・ソーシャル・動画)が、入札で枠を買う仕組みだということです。市場に入ってくる予算が増えれば、同じ枠を取り合う広告主が増え、落札単価は上がりやすくなります。2026年のインターネット広告媒体費も3兆5,840億円(前年比8.3%増)と伸びる予測で、競争は当面ゆるみません。
図① ネット広告費は総広告費の過半数へ。同じオークションに、年々多くの広告主と予算が入ってくる。出典:電通「2025年 日本の広告費」、CARTA HOLDINGS・電通・電通デジタル・セプテーニ「インターネット広告媒体費 詳細分析」(いずれも2026年3月5日)
媒体側の単価そのものが上がっている
単価の上昇は、広告主の体感ではなく媒体側の数字にも出ています。Meta Platformsの2026年4〜6月期の決算(2026年7月29日発表)では、広告の平均価格が前年同期比で12%上がり、広告の表示回数も14%増えました。地域別ではなく全世界の平均です。国内の数字で見ても、ソーシャル広告の媒体費は前年比18.7%増の1兆3,067億円と、ネット広告の中でもとくに伸びています。BtoCの主戦場であるSNS広告で、表示される量が増えながら単価も上がっている状態です。
単価が上がれば、同じ予算で買えるクリックは減ります。CV数が変わらなければ、CPAは上がります。そして媒体側の単価は、広告主1社の運用の工夫では動かせません。
AIによる自動入札が標準になり、運用の差がつきにくくなった
経済産業省の調査では、2024年の国内のBtoC-EC市場は26.1兆円(前年比5.1%増)、物販系分野のEC化率は9.8%まで拡大しています。EC化率がまだ1割ということは伸びしろが大きいということで、ネットで売る企業はこれからも増え、同じ枠を巡る入札はさらに混み合います。
一方で、P-MAXのような自動入札は当たり前になりました。各社が同じ仕組みで入札するので、運用のテクニックだけで他社と差をつけるのは、年々難しくなっています。
図② CPAが上がりやすくなっている3つの背景。どれも広告主1社(または代理店)の努力では動かしにくい外部環境
キーワードと入札の調整、クリエイティブの差し替え、媒体の追加、ターゲティングの絞り込み。どれも「クリックを安く買う」ための工夫で、大事なことに変わりはありません。ただ、その伸びしろは小さくなりつつあります。残っているのは、買った訪問の「価値」を上げることです。同じ1万回の訪問から、100件ではなく150件、200件のCVを生む。それがLP側の改善です。
CPAの分母を増やす:LP側の改善という発想
CPAは、広告費をCV数で割ったものです。下げる方法は2つしかありません。分子の広告費を削るか、分母のCV数を増やすか。広告運用の工夫は主に前者で、LP側の改善は後者です。
図③ CPAの式。分子(広告費)を削るのではなく、分母(CV数)を増やすのがLP側の改善
CVRが1.5倍になれば、CPAは同じ予算で3分の2になる
広告費100万円、CPC(クリック単価)100円で、1万クリックを買ったとします。CVRが1.0%ならCVは100件、CPAは1万円です。CVRが1.5%になればCVは150件、CPAは6,667円。2.0%なら200件、5,000円です。広告費は1円も変えていません。
| CVR | CV数 | CPA |
|---|---|---|
| 1.0% | 100件 | 10,000円 |
| 1.5% | 150件 | 6,667円 |
| 2.0% | 200件 | 5,000円 |
表① 広告費100万円・1万クリックのまま、CVRだけが変わったときのCPA
しかもこの効果は、LPを変えた日から「ずっと」続きます。広告の入札のように、毎日競り合う必要がありません。CPAをCPCとCVRに分解して原因を特定する手順はCPA改善のガイドに詳しく書いているので、ここでは計算機で、CVRの変化がCPAにどう効くかを確かめてください。
試算
CPA計算機:CPCとCVRを動かすと、CPAはどう変わるか
いまの状態
CPA = CPC ÷ CVR
¥6,000
もしこう変わったら
変化後のCPA
¥7,333+22%
CPCが+10%、CVRが−10%という「どちらも小さな変化」で、CPAは約+22%動きます。割り算の分母と分子が同時に悪化すると、変化は足し算ではなく掛け算で効きます。
スライダーを動かして、CPC・CVRの変化がCPAに与える影響を確かめられます。数値は仮の例です。
広告側の改善とLP側の改善は「両輪」。ただし性質が違う
広告側とLP側は、どちらか一方ではなく両輪です。ただし性質がかなり違います。その違いを知っておくと、予算と時間をどちらに寄せるかを決めやすくなります。
| 広告側の改善 | LP側の改善(CRO) | |
|---|---|---|
| 効果の持続 | 入札環境が変わると消える | 変えた瞬間から続く |
| 競合の影響 | 直接受ける(オークション) | 受けない(自社サイトの中) |
| 効果が及ぶ範囲 | その媒体・そのキャンペーンだけ | 検索・SNS・メールなど、すべての流入 |
| 検証のしやすさ | 外部要因が多く、切り分けが難しい | ABテストで因果を確かめられる |
| 着手の壁 | 運用会社に頼めば動く | サイトの改修が要る。開発やCMSの制約が壁 |
表② 広告側の改善とLP側の改善の違い。LP側の唯一の弱点が「着手の壁」
LP側の改善は、効果が続き、競合の影響を受けず、広告以外の流入にも効き、因果を確かめられる。良いことずくめに見えますが、ひとつだけ大きな弱点があります。「着手の壁」です。サイトを変えるには開発会社や制作会社に見積もりを取り、CMSの制約を確かめ、リリースを待つ必要がありました。この壁を崩したのがAIです。その話は後半でします。
CRO・LPO・EFO・ウェブ接客:用語と全体像
ここで用語を整理しておきます。似た言葉が多く、会話がすれ違いやすいところです。
- **CRO(Conversion Rate Optimization)**は目的です。訪問に対する申込み・購入の率(CVR)を上げること。広告、検索、SNS、どこから来た訪問にも効きます
- LPO(ランディングページ最適化)、EFO(入力フォーム最適化)、ウェブ接客は、CROで直す対象です。LPOはファーストビュー・訴求・構成・CTA(行動を促すボタン)といった着地先そのもの。EFOはフォームの項目数・エラー表示・入力補助で、最後の離脱を防ぐもの。ウェブ接客は追従バナーやポップアップで、読んでいる人にその場で次の一歩を差し出すものです
- ヒートマップとGA4は分析の道具、ABテストは検証の手段です
図④ CROは目的、LPO・EFO・ウェブ接客は直す対象。分析(ヒートマップ・GA4)と検証(ABテスト)は進め方
感覚で変えるのではなく、データで検証する
CROは「分析→仮説→実装→検証」のループです。ヒートマップやGA4で「どこで離脱しているか」を特定し、「なぜ離脱するのか」を言語化して改善案に落とし、改善案をLPに実装し、ABテストで元の案と同時に配信して数字で判定する。このループを回すほど、LPは自社の顧客に合わせて強くなります。1回の改修で終わるものではなく、繰り返す仕組みそのものに価値があります。
図⑤ CROのループ。4つのうち「実装」だけが、長いあいだ社内で完結しなかった
このループの3番目、「実装」が長いあいだ社内で完結しませんでした。次の章は、その壁の話です。
ABテストは20年前からある。なぜ「今」注目されているのか
ABテストという手法は新しくありません。2000年代後半にはGoogle Website Optimizerのような無料のツールがあり、2010年代にはOptimizelyなどのツールで、コードを書かずにページの一部を編集して配信できるようになりました。2023年9月にGoogle Optimizeが終了し、ツール選定を見直した会社も多いはずです。
手法そのものは20年間ほとんど変わっていません。変わったのは「誰が、どこまで作れるか」です。
| 時期 | 何が変わったか | 残っていた壁 |
|---|---|---|
| 2000年代後半 | 無料のABテストツールが登場 | 実装はエンジニア頼み |
| 2010年代 | ノーコードの編集画面で、文言や色を変えて配信できる | 構造を変える改修は開発待ち |
| 2023年 | Google Optimizeが終了。ツールの見直し期 | 同上 |
| 2025年〜 | 生成AIによるコード生成で、大きな改修も自力で作れる | 壁は「仮説の質」に移った |
表③ ABテストの20年。手法は同じ。変わったのは「誰が・どこまで作れるか」
ノーコード編集の限界:できたのは「軽微な編集」まで
ABテストツールのノーコード編集でできるのは、ボタンの色や文言の変更、見出しの差し替え、要素の非表示や並び替え、画像の差し替えといった「軽微な編集」です。それ自体は十分に価値があります。後で触れますが、文字を数文字変えただけで年間のCVが大きく動いた例を筆者は何度も見てきました。
一方で、ファーストビューの全面的な作り直し、比較表や診断型のUIや追従CTAといった新しいブロックの追加、テンプレートCMSで固定されたレイアウトの変更、フォームの構造変更(EFO)は、ノーコードでは手が出ませんでした。小さな改善は積み上がるけれど、「構造」は変えられない。構造を変えるには開発の見積もりとリリース待ちが要り、仮説が出てから検証まで数か月かかる。その間に、競合はもう次のテストをしています。
○ ノーコード編集でできたこと
- ボタンの色・文言の変更
- 見出しや説明文の差し替え
- 要素の非表示・並び替え
- 画像の差し替え
✕ できなかったこと(開発待ち)
- ファーストビューの全面刷新
- 比較表・診断UI・追従CTAなど新しいブロックの追加
- テンプレートCMSで固定されたレイアウトの変更
- フォームの構造変更(EFO)
図⑥ ノーコード編集の境界線。小さな改善は積み上がるが、「構造」は変えられなかった
AIによるコード生成が、右側の壁を取り払った
生成AIにHTML・CSS・JavaScriptを書かせる「AIコーディング」が実用になり、右側の壁が消えました。流れはこうです。
- 日本語で指示する。「ファーストビューを2カラムにして、左に地域の実績、右に申込みボタンを置いて」
- AIが既存ページの構造に合わせてコードを出す
- そのコードをABテストツールに入れる。タグ1つで配信できるので、CMSや開発環境には触らない
- 元のページと50:50で配信し、どちらが申込みにつながるかを判定する
開発チームの工数ゼロで、ファーストビュー全面刷新のテストが数日で回る。これが、ABテストが「今」注目されている理由です。コードを書けなくても、何を作りたいかを言葉にできれば実装できます。筆者自身、コードは書きません。
図⑦ AIコーディング×ABテストツールの流れ。「実装」の工程が、開発を待たずに社内で完結する
ただし主役はデータと仮説。AIを使わない選択も正解
ここで釘を刺しておきます。AIで大きく変えられるようになったからといって、「大きく変えればいい」わけではありません。
文字ひとつの変更でも、緻密な分析と仮説に基づいていれば大きく改善します。逆に、仮説のない派手なリニューアルは、何が効いたか分からないまま終わります。AIが外したのは実装の制約だけで、改善の精度を上げるのは、あいかわらず分析と仮説です。
- コーディングに不安がある方へ:AIを使わなくても、ノーコード編集と正しい仮説で成果は出ます。この後の「型④」がそれです
- AIを使いこなしたい方へ:AIが開くのは「大きな変更も検証できる」という選択肢です。選択肢が増えるだけで、必須ではありません
- どちらにも共通すること:勝つのは「ヒートマップで離脱点を見て、なぜかを考えた人」です。実装の手段は後から選べます
文字変更ならノーコード、構造変更ならAI生成。手段は仮説が決まった後に選ぶものです。「AIを使ったテスト」を目的にすると、仮説の無い改修が増えます。
CVRを上げる4つの型
ここからは、筆者がさまざまな業種のLPで繰り返し見てきた「離脱の形」と、それに対する「打ち手の型」を4つ紹介します。個別の案件の数字は出しませんが、型はそのまま自社のLPに当てはめられます。それぞれ、ヒートマップで何が見えるか、仮説は何か、実装の手段は何か、ABテストのゴールをどこに置くかを揃えて書きます。
型①:読んでいる人に、その場でボタンを差し出す(追従バナー)
ヒートマップで見えること:ファーストビューを越えた人は、しっかり読んでいる。なのにCTAはページの下部にしかない。「申し込もう」と思った瞬間に、画面にボタンがない状態です。
仮説:読んでいる最中の人に、その場でボタンを差し出せば、フォームに進む人が増える。
打ち手:画面の下に追従するバナーを置く。申込みの窓口が複数あるなら、ボタンを並べて一度で選べるようにする。LP本体のHTMLには触らず、バナーのコードだけをABテストツールで配信する。
ゴール:フォームへの到達。CVまで追うと判定に時間がかかるので、まず手前の指標で判定します。
図⑧ 型①の概念図。読んでいる位置にかかわらず、画面の下に申込みボタンがある状態を作る
国内603サイトの実測では、追従CTAの評価が低いサイトが60%ありました。多くのLPで、この型はまだ手付かずです。詳しくは603サイトで見る追従CTAを参照してください。
型②:引き止めるより、道案内する(離脱防止ポップアップ)
ヒートマップで見えること:特典や申込みの窓口が利用者の条件(住まいの形、契約の種類、年齢など)で分かれていて、「自分はどっち?」で迷って離脱している。
仮説:離脱しかけた人を「待って」と引き止めるより、「あなたはこちらです」と道案内したほうが、フォームに進む。
打ち手:離脱の動きを検知したときに出すポップアップを、「割引を見逃さないで」型ではなく「あなたに合う窓口を診断」型にする。2〜3問の選択で、合う申込み先へ案内する。
ゴール:フォームへの到達。ポップアップは複数案を同時に配信して、効く方向を先に見つけてから磨くのが速いです。
図⑨ 型②の概念図。引き止め型と道案内型。迷って離脱する人には、後者が効く
筆者の経験では、この型でひとつ学んだことがあります。施策は足し算にならないということです。追従バナーと道案内ポップアップは、どちらも「CVへの導線」という同じ機能を担っています。同じ機能の施策を重ねても、効果は合算されません。片方で十分に効いたら、次の一手は別の機能、たとえばファーストビューの訴求そのものに移すべきです。
型③:目次ではなく、費用の目安を見せる(料金ページ)
ヒートマップで見えること:料金ページなのに金額が1つも見えない。「大人の治療」「子どもの治療」「お支払い方法」といった目次のリンクが並び、金額を見るには1クリック先へ飛ぶ必要がある。しかも税抜き表記で、総額や月々の負担感が分からない。
仮説:高額で長期のサービスでは「いくらかかるか」が最大の不安です。価格を隠すのではなく、ページの最初で「相談は無料」「分割に対応」まで一目で分かる「費用の目安」に置き換えれば、相談の予約に進みやすくなる。
打ち手:目次の羅列を、項目ごとの目安額・分割の可否・無料相談の有無を書いたカードに置き換える。制作会社のテンプレートで作られたサイトでも、ブロックをAIで生成してABテストツールで配信すれば、制作会社に依頼せずに検証できます。
ゴール:相談予約のメニューへの到達。訪問数の少ない小規模なサイトでは、CVそのものをゴールにすると判定に何か月もかかります。手前の指標をゴールに置いて、検証の速度を上げます。
図⑩ 型③の概念図。料金ページの役割は「目次」ではなく「不安を減らすこと」
型④:速さより、正直な所要時間(CTAの文言)
ヒートマップで見えること:CTAは「90秒で登録」のように速さを訴求している。でもフォームの直前で迷いが見える。
仮説:この利用者層は「速い」より「ちゃんと伝わる」安心感を求めている。実際にかかる時間を正直に書いたほうが、安心して進める。
打ち手:「90秒」を「3分」に変える。これだけです。ABテストツールの編集画面で文字を打ち替えるだけで、AIもコードも要りません。
ゴール:会員登録などのCV。訪問数が多いLPなら、CVそのものをゴールにして数週間で判定できます。
図⑪ 型④の概念図。変えたのは数文字。仮説が正しければ、ノーコードでも成果は出る
この型が教えてくれるのは、AIを使わなくても、仮説が正しければ成果は出るということです。月間の訪問が数万あるLPなら、CVRが数%動くだけで年間のCV数は3桁から4桁変わります。「変更の大きさ」と「効果の大きさ」は比例しません。
4つの型に共通する勝ちパターン
4つの型は業種も手段もばらばらですが、進め方は同じです。
図⑫ 4つの型に共通する進め方。AIが広げたのは3番目の選択肢だけ。1番目と2番目の精度が、CPAを下げる本当の決め手
ABテストの設計で失敗しないために
型が決まったら、検証の設計です。ここでつまずくと、正しい案を「効果なし」と判定してしまいます。
ゴールは「CV」ではなく、手前の指標に置いてよい
CV数が少ないサイトで、CVそのものをゴールにすると、判定に何か月もかかります。フォームへの到達、予約メニューの選択、電話番号のタップなど、CVの1つ手前の行動をゴールに置けば、同じ期間で数倍のデータが集まります。改善案が「次の一歩に進ませる」ものである限り、手前の指標で判定して構いません。
期間の目安は2〜4週間。曜日の偏りをまたぐ
月間数千〜数万の訪問があるLPなら、2〜4週間が目安です。1週間未満で止めると、曜日や広告の配信の偏りをそのまま結果として読んでしまいます。逆に、何か月も引っ張ると、季節やキャンペーンの影響が混ざります。
「勝率」の読み方
多くのABテストツールは、改善案が元の案に勝っている確率を「勝率」や「信頼度」として出します。90%を超えたら採用、というのが一般的な目安です。ただし実務では、勝率が目安に届く前に「方向性は明らか」と判断して採用することもあります。その場合は、「有意な結果ではなく、方向性で採用した」と記録に残しておくことが大事です。後から振り返ったときに、何を根拠に決めたかが分かります。
段階を分けて、まず「効く方向」を見つける
最初から1つの案に絞らず、第1段階で複数の案を同時に配信して効く方向を見つけ、第2段階で勝った要素を組み合わせて磨く。この2段階にすると、少ない期間で確度の高い案にたどり着けます。ただし前の章で書いたとおり、同じ機能の施策を重ねても効果は足し算になりません。第2段階で組み合わせるのは、機能の違う施策です。
既存サイトが壊れるリスクは、仕組みで抑える
AIが書いたコードで既存サイトが壊れないか、という心配はもっともです。ABテストツールは、元のページに「上書き配信」するだけで、CMSやサーバーには触りません。配信前にプレビューで確かめ、問題があれば配信を止めれば即座に元に戻ります。品質を優先して案を選べば、リスクは十分に抑えられます。
LP改善でAIに渡すのは、すでに公開されているページのHTML・CSSと、アクセス解析の集計値が基本です。顧客情報や未公開のデータを渡す必要はありません。入力する情報の範囲を先に決めておけば、多くの社内ルールの範囲内で始められます。
自社のLPで確かめること
このガイドの内容を、自社のLPに当てはめるためのチェック項目です。ヒートマップが無くても、最初の5つは目で確かめられます。
- ファーストビューに「誰の・何を・どうする」があるか。スクロール前に、自分向けだと分かるか。雰囲気の写真とキャッチコピーだけになっていないか
- 読み進めた位置に、ボタンがあるか。スマホで下までスクロールしたとき、申込みボタンが画面内に見えるか(型①)
- 窓口が分かれているなら、道案内があるか。条件で申込み先が変わるとき、利用者が自分で判断させられていないか(型②)
- 料金ページに金額が見えるか。目次だけになっていないか。目安額・分割・無料相談が一目で分かるか(型③)
- CTAの文言は、利用者の不安に答えているか。速さ・手軽さの訴求が、かえって「ちゃんと伝わるか」の不安を生んでいないか(型④)
- 離脱点を数字で見られる状態か。ヒートマップかGA4で、どのページ・どの位置で止まっているかを出せるか
- ABテストを配信できる状態か。タグを1つ入れられるか。CMSや開発に依頼せずに配信できるツールがあるか
- ゴールを手前の指標に置けるか。フォーム到達や電話タップを、GA4のイベントかツールのゴールとして計測しているか
図⑬ 自社のLPで確かめる8項目。最初の5つは目視、残りの3つは道具の準備
よくある質問
そもそも、自社サイトのどこが課題なのか分かりません
ヒートマップやGA4のデータを見て、離脱が集中している箇所を特定するところから始めます。最近はヒートマップの分析にAIを組み込んだツールも出てきており、離脱の要因を示唆してくれます。生成AIにアクセス解析の集計値を渡して「どこで止まっているか」を一緒に考えるのも有効です。まずは「どこで止まっているか」を見るだけで十分です。サイト診断のガイドも参考にしてください。
社内にコードを書ける人がいなくても始められますか
はい。型④はノーコード編集だけです。AIにコードを書かせる場合も、必要なのは「何を変えたいか」を言葉にすることで、コードを読む必要はありません。最初の数本は、ツールの提供元や支援会社と一緒に設計すると早いです。
ABテストの結果が出るまで、どのくらいかかりますか
LPの訪問数とCV数しだいですが、月間数千〜数万の訪問で2〜4週間が目安です。CV数が少ないサイトでは、CVではなく「フォーム到達」など手前の指標でテストするのが実務的です。
AI利用に社内のルールがあり、使いにくいのですが
LP改善でのAI活用は、すでに公開されているページのHTML・CSSを調整する用途が中心です。顧客情報や未公開のデータをAIに渡す必要はなく、入力するのは公開情報とアクセス解析の集計値が基本です。不安な場合は、入力する情報の範囲を先に決めてから進めてください。
AIが生成したコードで、既存サイトが壊れるリスクは
ABテストツールは元ページに「上書き配信」するだけで、CMSやサーバーには触れません。テスト前にプレビューで検証し、問題があれば配信を停止すれば即座に元に戻せます。品質を優先して案を選べば、実務上のリスクは小さいです。
広告側の改善はもうやらなくていいのですか
いいえ。広告側とLP側は両輪です。広告文とLPの整合性、品質スコア、無駄クリックの削減は引き続き効きます。CPC改善のガイドに広告側の整理があります。このガイドが言っているのは、広告側の伸びしろが小さくなった今、LP側に手を付けていないなら、そちらの伸びしろのほうが大きいということです。
まとめ
- CPAの上昇は市場全体の流れです。ネット広告費は総広告費の過半数になり、媒体の単価は上がり続けています。広告運用の工夫だけでは追いつきにくくなっています
- CPA=広告費÷CV数。分子を削るより、分母を増やすLP側の改善(CRO)が、変えた日から効き続ける打ち手です
- ABテストは20年前からあります。今注目される理由は、AIが「実装の壁」を取り払い、構造を変えるテストが開発を待たずに数日で回るようになったからです
- ただし主役はデータと仮説です。文字ひとつの変更でも、離脱点を見て「なぜ」を言語化した案なら成果が出ます。AIは手段を広げるだけで、必須ではありません
- 次は、分析の側もAIと対話する時代になります。まず1本、自社のLPでABテストを回すところから始めてください
コンバージョン偏差値スキャナーでは、URLを入れるだけで、国内603サイトと同じ基準で追従CTA・フォーム・料金表示・信頼要素を含む50項目を採点し、同業種内の偏差値を出します。どの型が手付かずかを確かめる最初の一歩として使ってください。最短60秒・登録不要で結果が表示されます。
出典:電通「2025年 日本の広告費」(2026年3月5日)、CARTA HOLDINGS・電通・電通デジタル・セプテーニ「2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」(2026年3月5日)、Meta Platforms「Meta Reports Second Quarter 2026 Results」(2026年7月29日)、経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」(2025年8月26日)、Google「Google Optimize の提供終了」
