本記事の数値について
海外側の数値は、ECサイトの決済UXを専門に調査する米国のBaymard Instituteが公開する実測データ(50件の独立調査のメタ分析)を、2026年9月時点で確認して引用しています。国内側の数値は、20業種603サイトを同一基準で実測した2026年9月12日時点の診断データです(詳細は問合せフォームの項目数を減らすと、なぜ問合せが増えるのか)。対象は「ECの決済フォーム」と「日本の問合せフォーム」で目的も国も異なるため、数字をそのまま同一視はせず、一致する構造と、一致しない背景の両方を書きます。集計方法・採点基準は調査方法と採点基準をご覧ください。
「フォームの項目を減らすと完了率が上がる」というのは、国内のサイト改善(CRO:成約率の改善、EFO:入力フォームの改善)の現場でもよく言われます。ただし、この経験則が特定の国・業態だけの傾向なのか、それとも海外でも同じ構造が観測されているのかを、実測データ同士で突き合わせて確認したことがある人は多くありません。
今回、ECサイトの決済UXを長年調査してきた海外の調査機関の実測と、国内20業種603サイトの問合せフォームの実測を並べてみました。対象も国も違う2つの実測に、どこまで共通の構造があるかを見ていきます。
海外の実測:決済フォームは平均14.88項目、最適は7〜8
Baymard Instituteは、大手ECサイトの決済フロー(チェックアウト)を継続的に調査している米国の独立系UX研究機関です。同社が公開する最新の実測によると、米国の一般的な決済フローには平均23.48個のフォーム要素が表示されており、入力項目(フィールド)だけに絞っても平均14.88項目です。これに対し、同社が「最適」とする水準は12〜14要素、入力項目にして7〜8項目。つまり平均的な決済フォームは、最適とされる項目数のおよそ2倍近くまで膨らんでいることになります。
図① Baymard Instituteの実測(baymard.com、2026年9月時点で確認)
カート放棄の理由(「見ていただけ」の42%を除く)では、送料・税等の想定外の追加費用が40%で最多、次いで配送の遅さが20%、クレジットカード情報への不安が19%、アカウント作成の強制が18%、手続きの煩雑さそのものが17%と続きます。上位に来るのは「費用」と「信頼」に関する理由で、項目数そのものへの言及は17%です。決済フォームでは、項目数以外にも離脱の理由が分散していることが分かります。
国内の実測:問合せフォームは中央値7項目、11項目以上が25%
一方、国内20業種603サイトの実測(既報)では、問合せフォームを解析できた316サイトのうち、入力項目数の中央値は7項目、11項目以上が316件中80件・**25%**でした。必須マークが1つも付いていないフォームも173件・**55%**あります。
図② 国内603サイト中316サイトの実測(2026年9月12日時点。中央値は7項目。詳細は問合せフォームの項目数を減らすと、なぜ問合せが増えるのか)
こちらは決済フォームではなく、氏名・連絡先・相談内容を聞く一般的な問合せフォームです。決済に必要な住所・支払方法・配送先といった項目は元々含まれません。それでも、中央値の7項目は、Baymardが「最適」とする7〜8項目と近い水準でした。一方で、316サイトの25%は11項目以上でした。
比較して分かること
○ 一致する構造
- 国内の問合せフォームの中央値7項目は、Baymardが「最適」とする7〜8項目と近い水準
- どちらにも、項目の多いフォームが一定の割合である(海外の決済フォームは平均14.88項目、国内は25%が11項目以上)
- 国内の実測は、項目数と完了率の関係を比較実験で確かめたものではない
✕ 業態で異なる点
- 海外の離脱理由は「追加費用」「配送」「決済の不安」が上位。日本の問合せフォームにはこの種の費用不安は基本的に無い
- 国内側で最も大きい問題は必須マークの欠如(55%)。これは決済フォームの調査には無い、日本側で観測された独自の課題
- アカウント作成の強制(18%)は、問合せフォームでは通常起きない(国内の実測では数えていない)
図③ 海外の決済フォーム調査と、国内の問合せフォーム実測の比較
近いのは、国内の問合せフォームの中央値7項目と、Baymardが「最適」とする7〜8項目という水準です。ただし、国内の7は実際のフォームの中央値で、最適な項目数を測ったものではありません。決済フォームには住所や支払いの情報など、問合せフォームには無い項目も含まれます。また、国内の実測は、項目数を変えて完了率を比べた実験ではありません。そのため、人が受け入れられる項目数に共通の上限があるとまでは言えません。2つの数字が近かったのは、目安として参考になる、という程度にとどめるのが妥当です。
一致しないのは、離脱を引き起こす理由の中身です。海外の決済フォームでは「費用」「信頼」が主要因である一方、国内の問合せフォームでは必須マークの欠如という、項目数そのものとは別軸の問題が55%という高い割合を占めていました。これは、決済という金銭のやり取りが発生する場面と、問合せという意思表示だけで完了する場面の違いによるものと考えられます。同じ「フォームを削る」というテーマでも、削る対象と削り方の優先順位は、フォームの目的によって変わるということです。
国内の問合せ・予約フォームへの示唆
この比較から、国内の問合せ・予約フォームを見直す際に持ち帰れる点は3つです。
- 項目数7〜8を、見直しの目安の1つにする。 海外の決済フォームで「最適」とされる水準と、国内の問合せフォームの中央値が近い水準でした。ただし、目的の違うフォームの数字なので、自社のフォームで本当に必要な項目かどうかを1つずつ確かめるのが先です。
- 決済フォームにある「追加費用への不安」は、問合せフォームには直接当てはまらない。 問合せフォームに無い要素を直す施策(送料表示の改善など)は、そのまま当てはめても効果が出にくいと考えられます。自社のフォームがどの理由で離脱されているかは、実測で確認する必要があります。
- 国内特有の課題として、必須マークの整備を優先する。 55%が未対応というのは、海外の調査には出てこない、国内実測ならではの発見です。必須マークを付けると完了率が上がるかどうかは、今回の実測からは分かりません。変更の前後で、フォームを開いた数と送信が完了した数を計測して確かめるのが確実です。
海外の知見をそのまま持ち込むのではなく、「共通して言えそうなこと」と「自社の市場や目的でしか分からないこと」を分けて扱うと、フォームの見直しの優先順位を付けやすくなります。
まとめ
- 海外(Baymard Institute、決済フォーム)の実測:平均14.88項目、最適とされるのは7〜8項目
- 国内(CVSCAN Labが実測している603サイト、問合せフォーム)の実測:中央値7項目、11項目以上が25%
- 近い点:国内の問合せフォームの中央値7項目は、Baymardが「最適」とする7〜8項目と近い。ただし、国内の実測は比較実験ではない
- 一致しない点:海外は「追加費用」「信頼」が離脱理由の上位。国内は必須マークの欠如(55%)が独自の課題
- 海外の知見を輸入する際は、「業態を超えて成り立つ構造」と「自社の市場でしか分からないこと」を分けて考える
自社のフォームが項目数・必須マークの両面でどの位置にあるかは、実際に数えて初めて分かります。コンバージョン偏差値スキャナーでは、フォームの設計を含むUI/UX(CRO)軸を、この記事と同じ基準で採点します。URLを入れるだけで、最短60秒・登録不要で結果が表示されます。






