本記事の数値について 国内側は、20業種603サイトを同一基準で実測した2026年9月12日時点の診断データのうち、集計できた602サイトが対象です。このうち検索窓を除く入力フォームを持っていたのは316サイト、フォーム736件、入力項目3,916件でした。海外側は前回の記事で扱ったGoogleの調査で、米国の住所・クレジットカードのフォームが対象です。母集団が異なるため、優劣の比較ではなく国内の実態を見る材料としてお読みください。集計方法は調査方法と採点基準をご覧ください。
前回の記事で、オートフィルが使われた入力ではフォーム離脱が75%少なく、入力時間が約35%短いというGoogleの実測を紹介しました。そして、この効果を確実に受け取るには autocomplete 属性で欄の意味をブラウザに伝える必要がある、という話をしました。
では国内のサイトは、それを書いているのか。CVSCAN Labが実測している20業種602サイトのフォームを調べました。
書いているサイト
フォーム
241サイトのうち、専用キーボードを
取りこぼすサイト
入っているフォーム
CVSCAN Labが実測している20業種602サイトのうち、入力フォームを持つ316サイト・736フォームの実測(2026年9月12日時点)
autocompleteを書いているサイトは13.0%
autocomplete 属性を1つでも書いていたのは、フォームを持つ316サイトのうち**41サイト、13.0%**でした。
もっと厳しく見ると、状況はさらにはっきりします。入力項目3,916件のうち属性が付いていたのは208件で5.3%。そして**全項目に付けられていたフォームは736件中13件、1.8%**しかありませんでした。
図① 見方を変えると数字が下がる。「一部だけ付いている」状態が多い
13.0%から1.8%への落ち方が、実態を表しています。まったく知らないわけではないが、最後まで付けきっていない。メールアドレスの欄にだけ書いて、氏名や電話番号は素のまま、という形です。
オートフィルは欄ごとに働くので、付いていない欄はそこで止まります。途中まで自動で埋まって、残りを手で打つことになる。半端に対応すると、対応していないのとあまり変わらないのが、この項目の性質です。
電話・メール欄を持つサイトの6割に、専用キーボードが出ない欄がある
こちらの方が、影響を実感しやすいかもしれません。
スマートフォンで電話番号を入力するとき、数字のキーボードが出るか、文字のキーボードが出るか。これはHTMLの type 属性(または inputmode)で決まります。type="tel" と書いてあれば数字のキーボードが出ますが、type="text" のままだと、利用者は自分でキーボードを切り替えることになります。
電話番号・メールアドレス・郵便番号など、専用のキーボードが出るべき欄は937件ありました。そのうち適切な指定があったのは530件、56.6%。407件が取りこぼしです。
図② 専用キーボードが出るべき937項目の内訳
サイト単位で見ると、該当する欄を持つ241サイトのうち、**1つ以上取りこぼしていたのは144サイト、59.8%**でした。
これは「入力できない」わけではありません。利用者がキーボードを切り替えれば済みます。ただ、スマートフォンで数字を打つために、毎回ひと手間増える。前回の記事で見たとおり、入力の手間が増える場所は離脱が起きる場所です。
全項目に入力例(プレースホルダー)を入れているフォームが25%
3つめは、アクセシビリティの記事とも重なる論点です。
入力欄の中の薄い文字(プレースホルダー)を全項目に入れていたフォームは、736件中**183件、24.9%**でした。入力例そのものは役に立ちますが、見出しのラベルの代わりにしてしまうと、次のような問題が起きます。
プレースホルダーは、入力を始めると消えます。そのため「この欄は何を書くんだったか」を確認する手段がなくなります。項目が多いフォームで、後から見直したときに分からなくなる。読み上げソフトを使う人にも欄の意味が伝わりません。
また、薄いグレーで表示されることが多いため、屋外のスマートフォンでは読みにくくなります。
フォームの周辺
ついでに測れたものも挙げておきます。
図③ 736フォームのうち、それぞれの要素があった割合
目を引くのは**「安心材料の記載」が9.2%**という低さです。たとえば送信したあとどうなるか──いつ返信が来るのか、営業電話は来ないのか──といった一言は、項目を減らすより手間がかからず、書いて損のない場所です。
測り方が違う点
① 「専用キーボードが出るべき欄」は、欄の名前やラベルの文言(電話、tel、メール、郵便番号など)から機械的に判定しています。言い回しが違う欄は見落とします。
② 海外側のGoogleの調査は米国の住所・クレジットカードのフォームが対象で、こちらは国内の問い合わせフォームが中心です。同じ土俵の比較ではありません。
③ 送信先が外部ドメインのフォーム(14.3%)には、外部サービスが生成するHTMLが含まれます。この場合、属性を自社で足せないことがあります。
①は、見落とした欄の多くが未対応であれば、国内の数字を実際より良く見せる方向に働く可能性があります。③は、外部サービスが生成するフォームを除いて自社で直せる範囲だけを見れば、対応率が変わる可能性があります。いずれにせよ、autocompleteを書いていないサイトが大半だという傾向は変わらないと考えています。
何から直すか
どちらも属性を足すだけで、見た目も送信処理も変わりません。
- 電話番号の欄を
type="tel"にする(スマホでテンキーが出る。最も体感が変わる) - メールアドレスの欄を
type="email"にする - 各欄に
autocompleteを付ける(name / email / tel / postal-code / street-address) - 一部だけでなく、フォームの全項目に付ける(途中で止まると効果が出ない)
- 入力例だけで説明している欄に、見えるラベルを付ける
- 送信ボタンの手前に、返信の目安を一言書く
スマートフォンで自社のフォームを開き、電話番号の欄をタップするところから始めるのが早い
最初の項目は、自分のスマートフォンで確かめられます。自社のフォームを開いて、電話番号の欄をタップする。 文字のキーボードが出たら、そこが直す場所です。
まとめ
autocompleteを1つでも書いているサイトは13.0%。全項目に書けているフォームは1.8%- 「一部だけ付いている」状態が多く、オートフィルは付いていない欄で止まる
- 専用キーボードが出るべき937項目のうち407件が取りこぼし。該当欄を持つサイトの59.8%に1つ以上ある
- 全項目に入力例(プレースホルダー)を入れているフォームが24.9%。ラベルの代わりになっていないかは要確認
- 送信前の不安を減らす一言(安心材料)があるフォームは9.2%
- どれも属性の追加か一文の追記で済み、デザインも送信処理も変わらない
コンバージョン偏差値スキャナーでは、フォームの項目数や入力のしやすさをUI/UXの軸で採点しています。URLを入れるだけで、最短60秒・登録不要で結果が表示されます。
出典:Chrome for Developers「Autofill in action: real-world insights」






