本記事の数値について 速度と成果の関係は、Googleの依頼でDeloitteらが行った調査(2019年末の計測、web.devで公開)から、世界のサイトの速度の実態は、HTTP Archiveの年次報告「Web Almanac 2025」(2025年7月の計測)から引用しています。どちらも2026年10月時点で公開されている本文を確認しました。前者は欧米の大手ブランドのスマホサイトを対象にした調査です。中小企業のサイトにそのまま当てはまる数字ではありませんが、「速さはどれくらい効くのか」を考える材料として紹介します。
サイトの表示が遅いのは分かっている。でも、内容が良ければ待ってもらえるはず。
速度の改善は、デザインや文章の見直しに比べて後回しにされがちです。目に見えにくく、効果も実感しにくいからです。けれども、速度の差がどれくらい成果に響くのかを、大規模に測った調査があります。
フォームの送信が
コンバージョン率
スマホサイト(世界)
合格のスマホサイト
左2つはDeloitteら「Milliseconds Make Millions」(Google依頼、2019年末の計測)、右2つはHTTP Archive「Web Almanac 2025」(2025年7月の計測)より
0.1秒で、何が変わったのか
この調査は、Googleの依頼でデジタル分析会社の55とDeloitteが行ったものです。2019年の終わりに、欧米の大手37ブランドのスマホサイトについて、30日間、1時間ごとに表示速度を計測しました。対象は3,000万セッションを超えます。計測期間中にサイトのデザイン変更が行われていないこと、アクセス解析の設定に誤りがないことも確かめたうえでの分析です。
そのうえで、表示の速さに関わる4つの指標がそれぞれ0.1秒改善したとき、利用者の行動がどう変わるかをまとめています。
業種別に見ると、こうなっていました。
図① 表示に関わる4指標が0.1秒改善したときの変化(55・Deloitte「Milliseconds Make Millions」より作図)
日本の中小企業のサイトの多くは、問い合わせや資料請求、予約を取る「問い合わせ型」です。調査では、この業種でいちばん大きく動いたのがフォームを開いた人が送信まで進む割合で、21.6%の増加でした。トップページからフォームにたどり着く人も5.5%増えています。
フォームは、入力して、確認して、送信する、という画面の切り替えが続く場所です。1画面ごとの待ち時間は小さくても、それが重なると、途中でやめる人が増えます。フォームの項目数や入力のしやすさと同じくらい、画面が切り替わる速さが送信率に響いているということです。
「どこか1ページだけ速くしても」効かない
この調査には、見落としやすい条件が付いています。導線上のすべてのページで、4つの指標がそれぞれ0.1秒改善していることです。トップページだけを速くしても、フォームのページが遅いままなら、同じ効果は出ません。
これは、改善の進め方を考えるうえで大事な点です。速度の診断ツールはページを1枚ずつ測るので、ついトップページの点数ばかりを追いかけがちです。けれども、問い合わせにつながる道のりは、トップ、サービス紹介、料金、フォーム、確認画面と続いています。遅いページが1枚でも残っていると、そこで離れる人が出るおそれがあると考えて、導線全体を見ておくほうが安全です。
世界のサイトの半数は、まだ基準を満たしていない
では、世界のサイトはどれくらい速いのか。HTTP Archiveが毎年まとめている「Web Almanac」の2025年版に、実際の利用者の計測データ(Chromeの利用者から集めたもの)をもとにした数字があります。
Googleは表示の体験を測る3つの指標を「Core Web Vitals」として定め、それぞれに「良好」の基準を設けています。3つとも良好なサイトが、いわば「合格」です。
図② Core Web Vitals の3指標すべてが「良好」なスマホサイトの割合(HTTP Archive「Web Almanac 2025」より)。PCは2025年に56%
ここ数年で大きく改善したとはいえ、スマホで合格しているサイトは2025年でも48%。半分以上のサイトは、まだどこかの指標でつまずいています。
3つの指標を分けて見ると、つまずきやすい場所が分かります。
スマホで「良好」なサイトの割合
- メイン表示の速さ(LCP):62%
- 操作への反応(INP):77%
- 表示のずれ(CLS):81%
PCで「良好」なサイトの割合
- メイン表示の速さ(LCP):74%
- 操作への反応(INP):97%
- 表示のずれ(CLS):72%
図③ Core Web Vitals の指標別の内訳(2025年7月の計測)
スマホでいちばん合格率が低いのは、**ページのいちばん大きな部分(多くはトップの写真や見出し)が表示されるまでの速さ(LCP)**です。報告はほかにも、スマホでサーバーの応答が「良好」なサイトは44%にとどまること、スマホで画面の操作を妨げる処理の時間(TBT)の中央値が1,916ミリ秒まで伸びていることを挙げています。読み込むプログラムが増え、スマホの処理が追いついていない様子がうかがえます。
この数字の限界
① 速度と成果の調査は、Googleが依頼したものです。web.devのページ自身がそのことを明記しています。
② 2019年の、欧米の大手ブランドのスマホサイトの数字です。計測に使われた指標の一つ(First Meaningful Paint)はすでに廃止されており、今ならLCPで測るよう注記されています。
③ 「0.1秒」は導線のすべてのページでの改善です。1ページだけの改善で同じ効果が出るとは言えません。また、21.6%はフォームの1段目から送信に進む割合の変化で、サイト全体の問い合わせ数が21.6%増えたという意味ではありません。
それでも、二つの報告から言えることははっきりしています。速さは成果に効く。そして、世界の半数のサイトは、まだその基準に届いていない。速度の改善は「やれば差がつく」余地がまだ大きい分野です。
自社サイトでどう確かめるか
速度は、無料で、すぐに測れます。Googleの「PageSpeed Insights」にURLを入れると、2種類の結果が出ます。
- 上の「実際のユーザーの環境で評価する」:Chromeの利用者から集めた実測。アクセスが一定数あるサイトだけに表示される。出ていれば、まずこちらを見る
- 下の「パフォーマンスの問題を診断する」:その場でGoogleが読み込んだ結果。アクセスが少ないサイトでも出る。どこが遅いかの手がかりになる
- トップページだけでなく、サービス紹介・料金・フォーム・確認画面まで、問い合わせまでの道のりを順に測る
- 必ずスマホの結果を見る(PCより厳しく、利用者も多い)
- LCPが遅いときは、トップの大きな写真の容量、表示の遅延読み込み(lazy)の掛け間違い、サーバーの応答時間をまず疑う
- 操作の反応(INP)やTBTが悪いときは、後から足したタグやチャット、計測ツールの数を見直す
速度の確認は無料でできる。トップページ1枚ではなく、問い合わせまでの道のりで測る
特に、フォームと確認画面は見落とされがちです。予約システムや外部のフォームサービスを使っていると、そこだけ別のサーバーで動いていて、極端に遅いことがあります。お客様が最後に通る場所なので、ここが遅いと、それまでの改善の効果が小さくなるおそれがあります。
まとめ
- Googleの依頼でDeloitteらが行った調査では、表示に関わる指標が0.1秒改善すると、問い合わせ型サイトでフォームの1段目から送信に進む割合が21.6%増えた。小売ではコンバージョン率が8.4%、旅行では10.1%上がった
- ただしその効果は、導線のすべてのページが速くなった場合のもの。1ページだけでは足りない
- 2025年の世界のサイトで、Core Web Vitals を満たすのはスマホで48%、PCで56%。スマホで最もつまずいているのはメイン表示の速さ(LCP)で、良好なのは62%
- 速度は PageSpeed Insights で無料で測れる。トップからフォーム・確認画面まで、スマホで順に測る
では、国内の中小企業のサイトはどうか。CVSCAN Labが実測している20業種602サイトを PageSpeed Insights で測り直した結果をまとめました。
コンバージョン偏差値スキャナーでは、表示速度を含む50項目でサイトを採点し、改善の優先順位を示しています。URLを入れるだけで、最短60秒・登録不要で結果が表示されます。
出典:web.dev「Milliseconds make millions」(55・Deloitte、Google依頼)/HTTP Archive「Web Almanac 2025」Performance






