本記事の数値について
海外側は「The WebAIM Million 2026」(2026年2月実施・アクセス数上位100万サイトのトップページ)、国内側は20業種603サイトを同一基準で実測した2026年9月12日時点の診断データのうち、トップページの構造を集計できた602サイト(コントラストは測定できた600サイト)です。母集団(世界の大規模サイト/国内の中小規模サイト)も測定方法も異なるため、厳密な優劣ではなく傾向の比較としてお読みください。測り方の違いは本文の「測り方が違う点」に正直に書いています。集計方法は調査方法と採点基準をご覧ください。
前回の記事で、世界の上位100万サイトの95.9%にアクセシビリティ違反があることを紹介しました。では、日本の中小企業のサイトはどうなのか。同じ指標で国内603サイトを実測した結果を並べます。
結果は「全体的に良い」でも「全体的に悪い」でもなく、項目によってはっきり方向が分かれました。
世界は17.1%
世界は83.9%
世界は16.2%
世界は53.1%
国内20業種603サイト(2026年9月12日時点)と WebAIM Million 2026 の比較
最も差が大きいのは「本文へスキップ」:世界の4割弱
差がはっきり出たのがスキップリンクです。集計できた602サイトのうち、設置されていたのは**40サイト、6.6%**でした。世界の17.1%に対して、4割弱の水準です。
図① 「本文へスキップ」リンクがあるトップページの割合
スキップリンクは、ページの先頭に置く「本文へ移動」のリンクです。マウスを使わずキーボードだけで操作する人や、読み上げソフトを使う人は、ページを開くたびにヘッダーのメニュー項目を順番に読み上げられます。20項目のグローバルナビがあれば、本文にたどり着くまで20回の操作が必要になります。それを1回で飛ばすための仕組みです。
見た目には現れません。多くの場合、画面上では隠れていて、キーボードで操作したときだけ現れます。見た目の確認では存在にも不在にも気づけないため、意識して入れない限り入りません。国内で普及していない理由の一つは、この「見えなさ」にある可能性があります。
実装はHTMLとCSSを数行足すだけで、既存のデザインを変えずに済みます。影響を受ける人の数に対して、直す手間が最も小さい項目の一つです。
コントラストはほぼ同水準。ただし、これは控えめな数字
文字と背景のコントラストが、Webアクセシビリティの国際的な指針(WCAG)のAA基準(通常の文字で4.5:1)を下回る箇所が1つ以上あったサイトは、測定できた600サイトのうち**490サイト、81.7%**でした。世界の83.9%とほぼ同じ水準です。
図② コントラストがWCAG AA基準を下回る箇所が1つ以上あるページの割合
ここで正直に書いておくべきことがあります。こちらの測定は1サイトあたり平均53個の要素を抜き取って調べたもので、WebAIMがページ内のすべての文字を検査しているのとは方法が違います。全文字を調べれば、国内の数字はこれより高くなる可能性が高いと考えられます。つまり81.7%は「少なくともこれだけある」という控えめな数字です。
なお、測定できたサイトのコントラスト比の中央値は12.6:1でした。基準の4.5を大きく上回っています。大半の文字は十分読める一方で、どのサイトにも薄い箇所が数か所ある、という構図です。日付やキャプション、フォームの注釈、フッターの小さな文字。装飾のつもりで薄くした部分が、そのまま読めない部分になっています。
画像の代替テキスト:2つの数字が逆を向いた
altの結果は解釈が要ります。2つの見方で、日本の位置が入れ替わります。
○ 画像1枚ずつで見ると、日本が良い
- 国内:53,533枚のうち5,318枚にaltなし=9.9%
- 世界:16.2%
- 大半の画像には、きちんとaltが付いている
✕ サイト単位で見ると、日本が悪い
- 国内:1枚以上欠けているサイトが58.6%
- 世界:53.1%
- 完全に対応できているサイトは少ない
図③ 同じ実測データを、画像単位とサイト単位で見たときの違い
この2つを合わせると、国内の実態が見えてきます。「ほとんど対応しているが、完全ではない」サイトが多いということです。主要な写真やバナーにはaltを付けていても、アイコンや区切り線などの小さな画像が抜けている、という状態が考えられます。意識はしているけれど、最後まで徹底されていない可能性があります。
これは悪い知らせではありません。ゼロから始めるより、残りを埋める方がずっと簡単だからです。抜けている画像が装飾用であれば、alt=""(空のalt)を付けるだけで済みます。空のaltは「この画像は読み飛ばしてよい」という明示的な指示になり、読み上げソフトはファイル名を読み上げなくなります。
測り方が違う点
比較を額面どおり受け取らないために、こちらの測定の限界を書いておきます。
① コントラストは1サイト平均53要素の抜き取り。WebAIMは全文字を検査するため、国内の数字は実際より低く出ている可能性があります。
② スキップリンクは「本文へ」「コンテンツへ」「skip」という文言で検出しています。別の言い回しのリンクは見落とします。また、リンクが実際に機能するかは確認していません(WebAIMは設置されたスキップリンクの10本に1本が壊れていたと報告しています)。
③ 母集団が違います。WebAIMはアクセス数上位100万サイト、こちらは国内の中小規模サイト中心の603サイトです。
①は国内の数字を実際より良く見せる方向に働きます。そのため、①を補正しても国内のコントラスト不足の割合は上がる方向にしか動かず、「世界より良い」とは言えません。②は向きが混ざっています。別の言い回しを見落とす点では国内の設置率を低く見せ、機能するかを確かめていない点では高く見せます。スキップリンクの差は、言い回しの見落とし分だけ縮まる可能性があります。
何から直すか
- 薄いグレーの文字、写真に重ねた白文字を、屋外でスマートフォンから読んでみる(最も多くの人に影響する)
- 装飾のアイコンや区切り画像に
alt=""を付ける(意味のある画像には説明を書く) - ページ先頭に「本文へスキップ」リンクを入れる(数行で済み、見た目は変わらない)
- 入力欄のラベルが、入力例まかせになっていないか確認する
- キーボードのTabキーだけで、問い合わせボタンまでたどり着けるか試す
影響を受ける人の多さと、直す手間の少なさで並べた順
最後の項目は、道具も知識も要りません。Tabキーを押し続けるだけです。どこで詰まるか、いまどこが選択されているか分からなくなる箇所があれば、そこが改善点です。
まとめ
- 国内603サイトでスキップリンクがあったのは6.6%。世界の17.1%の4割弱だった
- コントラスト不足があるサイトは81.7%で世界の83.9%とほぼ同水準。ただしこちらは抜き取り測定のため、実際はより多い可能性がある
- 画像のalt欠落は画像単位では9.9%と世界(16.2%)より少ないが、1枚以上欠けているサイトは58.6%と世界(53.1%)より多い
- 「ほとんど対応しているが完全ではない」状態が多く、残りを埋めるのは比較的容易
- 見た目では気づきにくいスキップリンクが、測った項目の中で世界との差が最も大きかった
コンバージョン偏差値スキャナーでは、文字のコントラストやタップ領域を含むUI/UXの項目を、この記事と同じ基準で採点しています。URLを入れるだけで、最短60秒・登録不要で結果が表示されます。
出典:WebAIM「The WebAIM Million - The 2026 report on the accessibility of the top 1,000,000 home pages」






