本記事の数値について
20業種603サイトを同一基準で実測した、2026年9月12日時点の診断データに基づきます。以後の診断で母数は増えますが、本記事の数値は再集計せず固定しています。集計方法・採点基準・限界は調査方法と採点基準をご覧ください。
クリニックのサイトを見ている人は、商品を買おうとしているのではありません。自分や家族の体を、どこに預けるかを決めようとしています。判断の材料は、料金でも利便性でもなく、「ここは信頼できるか」の一点に集まります。
ところがこの信頼という材料は、サイト上では作りにくいものです。厚生労働省の医療広告ガイドラインにより、他業種のように成果を大きく謳ったり、患者の体験談をそのまま載せたりすることは制限されています(具体的にどこまで書けるかは、掲載前に同ガイドラインでご確認ください)。結果として「何も書かない」という選択に寄りやすく、当たり障りのない診療科目の一覧だけが並ぶサイトになりがちです。
私たちが2026年9月時点で診断した603サイトのうち、医療・クリニックは30サイトです。集計すると、技術面は20業種でも上位である一方、この「信頼を伝える情報」にあたる項目が軒並み低いという、はっきりした偏りが見えました。以下の数値はすべてこの30サイトの集計値です。
20業種中3位
平均より+9
平均との差は最小(+2)
診断サイト数
医療・クリニックの実測サマリー(2026年9月12日時点)
医療・クリニック30サイトの総合スコアは63点で、20業種中3位でした。4軸の内訳は次のとおりです。
| 軸 | 医療・クリニック(30件) | 全業種平均(603件) |
|---|---|---|
| SEO | 61 | 55 |
| LLMO | 52 | 43 |
| 技術基盤 | 73 | 69 |
| UX | 64 | 62 |
表① 医療・クリニック30サイトと全業種平均の比較
図① 医療・クリニックの4軸スコア。数字は「自業種/全業種平均・差」(2026年9月12日時点)。青緑=平均より3点以上高い軸、朱=3点以上低い軸
目を引くのはLLMO(生成AIに正しく読み取られるための構造)の52点です。全業種平均43点を9点上回り、20業種の中でも高い水準にあります。実際、sitemap.xmlは30サイト中29サイトにあり、構造化データが1件も入っていないサイトは7件にとどまりました。所在地や診療時間を機械可読な形で書くLocalBusiness系の構造化データは14サイトにあり、これは20業種で最も多い数です。
つまり、検索エンジンやAIに向けた「事実の伝達」は、他業種より整っています。弱いのは、人に向けた「判断材料の提示」のほうでした。
| 項目 | 平均点 | 50点未満の割合 | 母数 |
|---|---|---|---|
| CV-03 CTA周辺の不安解消 | 32 | 80% | 30サイト |
| C-08 FAQ・疑問解消 | 41 | 67% | 30サイト |
| C-07 事例・実績の見せ方 | 45 | 67% | 30サイト |
表② 医療・クリニックサイトの弱点トップ3
図② 医療・クリニックで50点未満だったサイトの割合(平均点ではなく、落ちているサイトの多さで見る)
弱点その1:予約ボタンの周りに、初診で何が起きるかが書かれていない
CV-03は、CVボタンの近くに、行動をためらわせる不安を打ち消す情報があるかを見る項目です。平均32点、80%が50点未満で、30サイトの中で最も低い項目でした。
初めてそのクリニックに行く人が、予約ボタンを押す直前に抱えているのは、症状の相談以前の疑問です。初診にどれくらい時間がかかるのか。保険は使えるのか、自費なのか。紹介状は必要か。持ち物は何か。キャンセルはいつまでにどう伝えればよいか。これらが分からないまま押すのは、患者側にとって小さくない負担です。
対策は、予約ボタンの直下に初診の前提を数行置くことです。所要時間の目安、持参するもの、紹介状の要否、キャンセルの連絡方法。診療内容の説明ではないため広告ルール上の制約も受けにくく、それでいて押すかどうかの判断には直接効きます。
弱点その2:FAQが「診療時間は何時ですか」で止まっている
C-08は、訪問者が抱く疑問にサイト上で答えられているかを見る項目です。平均41点、67%が50点未満でした。
FAQページ自体はあるサイトも少なくありません。ただ内容が、診療時間や駐車場の有無といった、他のページを見れば分かる情報にとどまっているケースが目立ちます。本当に答えてほしいのは、そこではありません。「この症状はそちらで診てもらえるのか」「どのくらい通うことになるのか」「他院で受けた検査結果は持参すべきか」といった、受診するかどうかを左右する疑問です。
FAQは、受付で実際に聞かれている質問をそのまま拾うのが確実です。何度も同じ質問を受けているなら、それはサイトに書かれていない証拠と考えられます。受付で2週間ほどメモを取り、頻度の高い順に答えを書くだけで内容は大きく変わります。
もう一点、FAQは検索エンジンや生成AIにも読ませる価値があります。30サイトのうち、FAQを構造化データ(FAQPage)として記述していたのは2サイトのみでした。LocalBusiness系が14サイトあることを考えると、実装力の問題というより、FAQを構造化する発想がまだ広まっていないためと考えられます。構造化データ全般の状況は603サイトの構造化データ実測にまとめています。
弱点その3:診療の実績が、数字でも範囲でも示されていない
C-07は、実績や事例が伝わる形で示されているかを見る項目です。平均45点、67%が50点未満でした。
医療広告のルールがあるため、他業種のような「お客様の声」をそのまま載せる方法は取りにくい。ただ、示せるものが何もないわけではありません。開院からの年数、常勤の医師数と専門領域、対応できる症状や処置の範囲、導入している設備、学会や研修の実績。いずれも事実の記載であり、患者が「ここでいいのか」を判断するための材料になります。
多くのサイトで起きているのは、これらが院長挨拶や設備紹介のページに散らばっていて、受診を検討している人の視線の通り道に置かれていないという状態です。診療科目ページの中に、その症状について「当院では何ができるのか」を具体的に書く。それだけで、同じ情報でも判断材料として機能し始めます。
なお、表現がルールに抵触しないかの確認は必須です。迷う表現は事実の列挙に置き換えるのが安全です。「地域で評判の」と書く代わりに、開院年と対応実績の範囲を書く。判断は読む側に委ねたほうが、結果として信頼されます。
強い部分
医療・クリニック30サイトの強みは、SSL対応が平均97点、viewport設定が平均88点、画像・ビジュアルの品質が平均84点でした。技術基盤73点は全業種平均を上回り、総合3位を支えています。土台は整っているので、改善の余地は書かれている内容のほうに集中しています。
自社サイトではどう確認するか
初診の患者になったつもりで、スマートフォンから自院のサイトを開いてみてください。
- 予約ボタンが見えている画面で指を止め、所要時間・持ち物・保険の扱い・キャンセル方法のうち、いくつ分かるかを数えます。ゼロなら、CV-03の対象です。
- FAQを開き、質問を上から読みます。他のページを見れば分かる内容だけが並んでいたら、C-08の対象です。
- 主要な診療科目のページを開き、「このクリニックでは何ができるのか」が具体的に書かれているかを見ます。科目名と一般的な症状の説明だけなら、C-07の対象です。
自社サイトで確認する手順
一方、H1見出しの欠落のように画面からは見えない問題もあります。30サイトのうち14サイトでH1が欠落していました。こうした部分も含めて把握したい場合は、コンバージョン偏差値スキャナーにURLを入れると、同じ基準の採点結果が同業種内での偏差値として表示されます。
まとめ
- 医療・クリニック30サイトの総合スコアは63点で20業種中3位。LLMO52点は全業種平均を9点上回る
- sitemap.xmlは29サイト、LocalBusiness系の構造化データは14サイトと、機械可読な情報整備は20業種で上位
- 一方でCTA周辺の不安解消は平均32点・80%が50点未満と、最も弱い項目だった
- FAQは平均41点。FAQPageとして構造化していたのは2サイトのみ
- 実績の提示は平均45点。広告ルールの制約下でも、事実の列挙という形で示せる材料は残っている
他の業種と比べてどの位置にいるかは、20業種の総合スコア一覧にまとめています。






