本記事の数値について
20業種603サイトを同一基準で実測した、2026年9月12日時点の診断データに基づきます。以後の診断で母数は増えますが、本記事の数値は再集計せず固定しています。集計方法・採点基準・限界は調査方法と採点基準をご覧ください。
ネットショップには店員がいません。実店舗なら「この素材って洗えますか」「いつ届きますか」と聞けば数秒で解決する疑問が、ECサイトでは訪問者の頭の中に残ったままになります。そして解決しないまま、カートに入れず、あるいはカートに入れたまま離れていきます。
私たちは2026年9月時点で603サイトを同じ基準で診断しました。そのうちEC・小売に分類されたのは30サイトです。この記事の数値はすべて、その30サイトの実測値です。
結果を先に書くと、EC・小売は「買える状態」はよく整っている一方、「買う前に湧く疑問に答える」部分が欠けていました。決済フローの手前と中の両方に、離脱の余地が残っています。
20業種中14位
平均より+3
平均より-7
診断サイト数
EC・小売の実測サマリー(2026年9月12日時点)
EC・小売30サイトの総合スコアは54点、20業種中14位でした。4軸の内訳は以下のとおりです。
| 評価軸 | EC・小売(30件) | 全業種平均(603件) |
|---|---|---|
| SEO | 53 | 55 |
| LLMO | 36 | 43 |
| 基盤 | 63 | 69 |
| UX | 65 | 62 |
| 総合 | 54 | — |
表① EC・小売30サイトと全業種平均のスコア比較
図① EC・小売の4軸スコア。数字は「自業種/全業種平均・差」(2026年9月12日時点)。青緑=平均より3点以上高い軸、朱=3点以上低い軸
特徴的なのはUXです。65点は全業種平均の62点を上回っており、買い物カゴまでの操作性は他業種より整っていると考えられます。
一方でLLMOは36点で、全業種平均を7点下回りました。構造化データがまったくないサイトが30件中14件、FAQPage(よくある質問の構造化データ)は30件中0件です。生成AIや検索エンジンが商品情報を読み取る手がかりが、ほぼ置かれていません。
弱点その1:商品ページの疑問に、誰も答えていない
C-08「FAQ・疑問解消」は平均32点。30件中22件(73%)が50点未満でした。今回のEC・小売で最も低い項目です。
ECの購入前に湧く疑問は、かなり具体的です。サイズが合わなければ交換できるのか、送料はいくらから無料か、いつ発送されるのか、開封後でも返品できるのか。いずれも購入の直前に発生し、答えが見つからなければそのまま離脱につながります。
多くのサイトで、これらの情報は「特定商取引法に基づく表記」のページに集約されていました。記載としては正しいのですが、購入を迷っている人がフッターの小さなリンクからそこへ移動して読むことは、あまり期待できません。
直し方は二段階です。まず、送料・お届け日数・返品交換の可否・支払方法の4点を、商品ページのカートボタンのすぐ下に短く書きます。「送料全国一律◯円/◯円以上で無料」「平日15時までのご注文で翌営業日発送」のように、1行ずつで構いません。次に独立したFAQページを作り、問い合わせで実際に来た質問をそのまま見出しにします。見出しを<h2>などの見出しタグにしてFAQPageの構造化データを付ければ、検索結果やAIの回答に引用される可能性が生まれます。
弱点その2:スクロールすると、買う手段が画面から消える
CV-06「離脱防止施策(追従CTA等)」は平均37点。30件中25件(83%)が50点未満でした。
商品ページは縦に長くなりがちです。写真、スペック表、素材の説明、レビュー。訪問者がそれらを読んで「買おう」と判断するのは、たいていページの中ほどから下のほうです。ところがカートボタンがページ上部にしかないと、その瞬間に押すものが画面にありません。上に戻る操作を挟むと、そこで熱が冷めます。
スマートフォンでは画面が狭いぶんスクロール量が増え、影響がさらに大きくなります。
直し方は、スマートフォン表示で画面下部に固定表示されるバーを置き、そこに価格と「カートに入れる」を並べることです。バリエーション(色・サイズ)の選択が必要な商品であれば、バーをタップしたときに選択パネルが開く形にします。固定バーは画面の一部を常時占有するので、高さは50〜60px程度に抑え、ファーストビューを過ぎてから出現させると邪魔になりにくくなります。
弱点その3:同意チェックと確認画面で、最後の一歩が止まる
F-06「同意・確認のUX」は、フォームを持つ16件のうち14件(88%)が50点未満、平均39点でした。低評価の割合としては今回の項目で最も高い数字です。
よくあったのは、規約への同意チェックが必須なのにリンク先が別タブで開いて元の入力内容が分からなくなる、同意項目が複数並んでどれが必須か判別できない、確認画面から修正しようとすると最初からやり直しになる、といった構造です。
購入直前は、訪問者が最もためらいやすい場面です。ここで「読まないとチェックできない長文」や「押し戻されるボタン」が出てくると、買う気そのものが揺らぎます。
直し方は具体的です。規約は別ページに飛ばさず、その場で開閉するか、スクロールできる枠内に表示します。同意のチェックボックスは必須のもの1つに絞り、メールマガジン購読などの任意項目とは明確に分けます。確認画面には各項目の横に「修正する」リンクを置き、押したときは該当の入力欄に戻り、入力済みの値が保持されている状態にします。同意の設計については、フォームの同意取得についての記事でも詳しく扱っています。
強い部分
評価が高かったのは、T-01「SSL(HTTPS)対応」が平均100点、CV-07「CVポイントの複数化」が平均94点、N-06「フッターの情報設計」が平均88点です。購入導線が複数用意され、フッターに配送・支払・会社情報が整理されている点は、EC・小売の明確な強みでした。土台は整っているので、今回の3つは追加開発ではなく調整で届く範囲にあります。
自社サイトではどう確認するか
スマートフォンで、自社サイトの主力商品ページを開いてみてください。確認するのは次の順序です。
- カートボタンの周辺に、送料・お届け日数・返品可否が書かれているか。書かれていなければ、訪問者はそれを探しに別ページへ移動している
- ページの一番下までスクロールした状態で、カートに入れる手段が画面内にあるか
- 実際に1点購入手続きを進め、同意チェックと確認画面で止まる箇所がないか。規約リンクを押した後に入力内容が残っているかを必ず見る
- 過去の問い合わせメールを10件ほど遡る。繰り返されている質問は、サイトに書かれていない疑問そのもの
自社サイトで確認する手順
1ページずつ目視で確認するより、コンバージョン偏差値スキャナーにURLを入力したほうが早く済みます。この記事と同じ基準で採点し、同業種の中での偏差値として結果が出ます。
まとめ
- EC・小売30サイトの総合スコアは54点、20業種中14位。UXは65点で平均超えだが、LLMOは36点と平均を7点下回った
- 最大の弱点はC-08「FAQ・疑問解消」で平均32点、73%が50点未満。送料・納期・返品の情報が購入導線の近くに置かれていない
- CV-06「離脱防止施策」は83%が50点未満。長い商品ページで、買う手段が画面から消えている
- F-06「同意・確認のUX」はフォームを持つ16件中88%が50点未満。注文の最終段階でのつまずきが残っている
- 構造化データがまったくないサイトが14/30件、FAQPageは0/30件。着手するだけで差がつく領域と考えられます
他業種との比較は20業種の総合スコア一覧にまとめています。






