本記事の数値について
20業種603サイトを同一基準で実測した、2026年9月12日時点の診断データに基づきます。以後の診断で母数は増えますが、本記事の数値は再集計せず固定しています。集計方法・採点基準・限界は調査方法と採点基準をご覧ください。
宿泊施設のサイトには、他業種にない事情があります。予約の大半を外部の予約サイトが担っているため、自社サイトの役割が曖昧になりやすいことです。
予約サイトは集客してくれますが、手数料がかかります。だからこそ多くの施設が「公式サイトからの直接予約が一番お得です」と書きます。ところが、その公式サイトが検索で見つけにくく電話もかけにくい状態なら、直接予約の受け皿として機能しません。
私たちは2026年9月時点で603サイトを同じ基準で診断しました。観光・宿泊は30サイトです。この記事の数値はすべてその実測値で、見えてきたのは、写真は美しいのに検索エンジンとAIに中身が伝わらず、電話もつながらないという構図でした。
20業種中18位
平均より-4
平均より-9
診断サイト数
観光・宿泊の実測サマリー(2026年9月12日時点)
観光・宿泊30サイトの総合スコアは52点、20業種中18位でした。
| 評価軸 | 観光・宿泊(30件) | 全業種平均(603件) |
|---|---|---|
| SEO | 46 | 55 |
| LLMO | 39 | 43 |
| 基盤 | 63 | 69 |
| UX | 58 | 62 |
| 総合 | 52 | — |
表① 観光・宿泊30サイトと全業種平均のスコア比較
図① 観光・宿泊の4軸スコア。数字は「自業種/全業種平均・差」(2026年9月12日時点)。青緑=平均より3点以上高い軸、朱=3点以上低い軸
4軸すべてが全業種平均を下回りました。特に差が大きいのがSEOで、平均55点に対して46点、9点の開きがあります。以下の弱点1と2は、このSEOの落ち込みに直結している項目です。
弱点その1:ページが何のページなのか、機械には分からない
T-05「H1/title整合」は平均32点。30件中20件(67%)が50点未満でした。実測でH1見出しが欠落していたサイトは30件中24件です。20業種の中でも高い数字でした。
H1はページの主見出しにあたるタグで、検索エンジンがページの主題を判断する手がかりの一つです。観光・宿泊で欠落しやすいのは、ファーストビューが大きな写真で構成され、その上にキャッチコピーを画像として重ねる作りが多いためです。人間の目には立派な見出しに見えますが、HTMLとしては見出しタグが存在しない状態になります。
titleタグとの不整合も目立ちました。客室ページも料理ページもアクセスページも施設名だけの同じ文字列、というケースです。これでは検索結果に並んだとき、利用者もどれを開けばよいか判断できません。
直し方は、ページごとに1つだけH1を置き、そのページが何を説明しているかをそのまま書くことです。客室ページなら「客室のご案内」ではなく「和洋室・露天風呂付き客室のご案内」のように、特徴が入った表現にします。titleは「ページ内容|施設名|エリア名」の順で組み立てます。エリア名が入ることで、地域名を含む検索との接点ができます。詳細はH1の欠落・重複についての記事にまとめています。
弱点その2:施設情報を機械が読める形で置いていない
T-03「構造化データ(JSON-LD)」は平均33点。30件中20件(67%)が50点未満でした。実測では、構造化データがまったくないサイトが19件、宿泊施設や地域事業者を表すLocalBusiness系の記述は3件のみ、FAQPageは0件。sitemap.xmlがあったのも21件にとどまります。
構造化データは、住所・電話番号・営業時間・施設の種別などを、検索エンジンや生成AIが誤解なく読み取れる形式で書いておく仕組みです。宿泊施設で重要なのは、検索が「施設名」ではなく「エリア名+条件」で行われることが多いからです。「◯◯温泉 露天風呂付き客室」のような探し方をされたとき、条件に合致する施設だと機械側が判断できなければ候補に挙がりません。
生成AIに旅行先を相談する行動も増えています。そのときAIが参照するのは予約サイトか公式サイトの情報です。公式サイト側に読み取れる情報がなければ、自社で記述をコントロールできません。
直し方は、まず全ページ共通でLocalBusiness系(宿泊施設ならHotelやLodgingBusiness)のJSON-LDを設置し、施設名・住所・電話番号・チェックイン/アウト時刻・公式サイトURLを記述することです。次に、よくある質問ページを作ってFAQPageを付けます。現状0件なので着手するだけで違いが出ます。あわせてsitemap.xmlも生成してください。
弱点その3:電話がかけられない
CV-05「電話・チャット等の代替CV」は平均35点、30件中24件(80%)が50点未満でした。実測でtel:リンク(タップ1回で発信できるリンク形式)を実装していたのは、30件中わずか4件です。
宿泊業では、フォームでは処理できない問い合わせが一定量あります。当日や直前の空室確認、団体や法人利用の相談、アレルギー対応や介助が必要な方の受け入れ可否、繁忙期の融通。いずれも往復のやり取りが必要で、電話が最短経路になる相談です。
そして電話をかけようとする人は、比較検討をほぼ終えている見込み客であることが多い。番号がただのテキストや画像なら、番号を覚えて電話アプリを開き手入力する手順が挟まります。その数タップの差で離脱する人が出ます。
直し方は3点です。電話番号を<a href="tel:0123456789">の形式にすること。ヘッダー・フッター・アクセス・お問い合わせの4ページすべてで実装すること。そして番号の横に電話受付時間を書くことです。C-L1「営業時間・休業日の明示」が平均31点と今回の最低スコアだったことも、同じ問題の表れと考えられます。
強い部分
評価が高かったのは、T-01「SSL(HTTPS)対応」が平均100点、V-05「画像・ビジュアルの品質」が平均91点、T-06「viewport設定」が平均88点です。写真の質の高さは明確な強みで、魅力を伝える素材は揃っています。足りないのは、その素材が置かれたページを機械に認識させる部分と、心が動いた人の受け皿です。
自社サイトではどう確認するか
実務的な確認手順は次のとおりです。
- 主要ページで右クリックして「ページのソースを表示」を選び、`<h1`を検索する。見つからなければH1が欠落している
- 同じ要領で`application/ld+json`を検索する。見つからなければ構造化データがない
- スマートフォンで電話番号をタップし、発信画面が出るか。ヘッダー、フッター、アクセスページの3か所すべてで試す
- 「施設名」ではなく「エリア名+施設の特徴」で検索し、自社サイトが出るか、予約サイトの掲載ページだけかを見る
- 予約サイトの掲載情報と公式サイトの記載を突き合わせる。公式のほうが情報が少ないなら、直接予約を選ぶ理由が伝わっていない
自社サイトで確認する手順
1ページずつ確認するより、コンバージョン偏差値スキャナーにURLを入力したほうが早く、同業種の中での位置が偏差値で分かります。
まとめ
- 観光・宿泊30サイトの総合は52点、20業種中18位。4軸すべてが全業種平均を下回った
- T-05「H1/title整合」は平均32点、H1欠落は30件中24件。写真中心の作りが原因と考えられます
- T-03「構造化データ」は平均33点、皆無が19件、LocalBusiness系は3件、FAQPageは0件
- CV-05「電話・チャット等の代替CV」は80%が50点未満。
tel:リンク実装は30件中4件のみ - 画像品質は平均91点と高い。素材ではなく、検索とAIへの伝達と電話導線が抜けています
他業種との比較は20業種の総合スコア一覧にまとめています。






