本記事の数値について
20業種603サイトを同一基準で実測した、2026年9月12日時点の診断データに基づきます。以後の診断で母数は増えますが、本記事の数値は再集計せず固定しています。集計方法・採点基準・限界は調査方法と採点基準をご覧ください。
SaaSやクラウドサービスのサイトは、全体としてよく作り込まれています。無料トライアルや資料請求への導線があり、料金表があり、SSLもレスポンシブ対応も当たり前に済んでいる。改善の相談を受けても「大きく壊れている箇所」はなかなか見つかりません。
実際、私たちが2026年9月時点で診断した603サイトのうち、SaaS・クラウドサービスは30サイト。その総合スコアは69点で、20業種中1位でした。
ただし1位は満点ではありません。項目単位で見ていくと、優秀な項目の陰で特定の数項目だけが沈んでいます。しかもそれは、SaaSの中心にある「トライアルまでの導線」に関わる部分でした。
20業種中1位
平均より+17
平均との差は最小(+8)
診断サイト数
SaaS・クラウドの実測サマリー(2026年9月12日時点)
まず全体像です。4つの軸を全業種平均(603件)と並べます。
| 軸 | SaaS・クラウド(30件) | 全業種平均(603件) |
|---|---|---|
| SEO | 66 | 55 |
| LLMO | 60 | 43 |
| 基盤 | 81 | 69 |
| UX | 70 | 62 |
| 総合 | 69 | - |
表① SaaS30サイトと全業種平均のスコア比較
図① SaaS・クラウドの4軸スコア。数字は「自業種/全業種平均・差」(2026年9月12日時点)。青緑=平均より3点以上高い軸、朱=3点以上低い軸
4軸すべてで全業種平均を上回っています。特に基盤81点とLLMO60点が目立ちます。構造化データがまったく無いサイトは30件中6件で、診断した20業種の中でも少ないほうです。FAQPage構造化データを持つサイトも5件、sitemapは25/30が設置済みでした。
裏を返せば、この水準のサイトに残る伸びしろは、技術的な不備ではなくCV導線側にあることになります。実際、平均点が低い順に並べた上位はほぼCV関連の項目でした。
| 項目 | 平均点 | 50点未満の割合 |
|---|---|---|
| CV-05 電話・チャット等の代替CV | 32 | 80% |
| N-04 サイト内検索 | 51 | 80% |
| CV-06 離脱防止施策(追従CTA等) | 51 | 47% |
表② SaaS30サイトの弱点トップ3
図② SaaS・クラウドで50点未満だったサイトの割合(平均点ではなく、落ちているサイトの多さで見る)
弱点その1:トライアル以外の入口がない(CV-05/平均32点)
最も低かったのは、電話やチャットなど「フォーム以外の問い合わせ手段」の項目で、平均32点。80%が50点未満でした。電話番号がタップで発信できる形(tel:リンク)になっているサイトは30件中5件です。
SaaSでは、無料トライアルやオンラインデモへの申し込みが主要なCVとして設計されています。これ自体は理にかなっています。ただし、検討者全員がその1本で足りるわけではありません。既存システムとの接続可否、契約形態、セキュリティ要件、他部署分を含めた見積り。こうした問い合わせは、トライアルのアカウントを作っても解決しません。導入を決裁する立場の人ほど、この手の確認を先に済ませたいと考える可能性があります。
直し方は、トライアル申し込みと並べて「相談する」経路を1本用意することです。料金ページと機能ページの主要CTAの近くに、チャットまたは問い合わせフォームへのリンクを置く。電話を受ける体制があるなら、番号は必ず<a href="tel:...">形式にしてタップで発信できるようにし、営業時間を併記します。トライアル導線を弱める必要はなく、横に1本足すだけの改修です。
弱点その2:ドキュメントはあるのに探せない(N-04/平均51点)
サイト内検索は平均51点、80%が50点未満でした。低評価の割合という点では、最も低かったCV-05と並びます。
SaaSのサイトは、機能ページ、料金、導入事例、ヘルプ、更新履歴、ブログと、ページ数が増えやすい構造です。情報量そのものは他業種より充実していることが多い。しかし、検索窓が無い、あるいはヘルプセンター側にしか無いという状態だと、訪問者は「この機能が自社の要件を満たすか」を確認する手段がグローバルナビをたどることしかなくなります。比較検討中の人は複数サービスを並行して見ているため、探す手間がそのまま離脱に変わる可能性があります。
対応は段階を踏めます。まずヘッダーに全ページ共通の検索窓を置き、ヘルプとブログを含む全体を対象にする。次に、検索結果ページで種別(機能・ヘルプ・事例)を絞れるようにする。その上で検索クエリのログを見れば、どの情報が見つけにくいかが分かります。よく検索される語が既存ページのタイトルに入っていなければ、検索機能ではなく情報設計の問題です。
弱点その3:長いページの途中でCTAが消える(CV-06/平均51点)
離脱防止施策、つまり追従CTAなどの有無を見る項目は平均51点、47%が50点未満でした。
SaaSのトップページや機能紹介ページは、スクロールの長い1枚構成になりがちです。ファーストビューに「無料で試す」があり、ページ末尾にもう一度ある。その間の数画面分は、CTAが視界に入りません。訪問者が「使えそうだ」と判断するのは機能説明や事例を読んでいる途中であることが多く、その瞬間に押せるボタンが画面内に無いと、スクロールして探す手間が挟まります。
改修としては、スマートフォンで画面下部に固定表示されるCTAバーを1本入れるのが最も費用対効果が高い選択です。あわせて、長いページでは3〜4画面おきにセクション内CTAを配置します。ただし固定バーは画面を覆うため、フォーム入力中は非表示にする、閉じるボタンを付けるといった配慮が要ります。追従CTAの実装パターンは追従CTAの実装状況を603サイトで調べた記事で詳しく扱っています。
強い部分
技術基盤は安定しています。SSL対応は30サイトすべてが実装済みで平均100点、viewport設定97点、画像・ビジュアルの品質95点。基盤81点は、開発体制を社内に持つ企業が多い業種の特性が表れたものと考えられます。
自社サイトではどう確認するか
手元で確認するなら、次の順が早いはずです。
- 料金ページをスマートフォンで開き、「トライアル」以外にどこへ進めるかを数える。選択肢が1つだけならCV-05の課題に該当する可能性があります
- 電話番号を指でタップする。発信画面が出なければテキストのまま置かれています
- ヘッダーに検索窓があるか、ヘルプ以外も検索対象に入っているかを確認する
- 機能紹介ページをスクロールし、CTAが画面内に無い区間が何画面分あるかを数える
自社サイトで確認する手順
まとめて洗い出したい場合は、コンバージョン偏差値スキャナーにURLを入れてください。この記事と同じ基準で採点し、同業種内での偏差値として結果が出ます。
まとめ
- SaaS・クラウドサービス30サイトの総合スコアは69点で、20業種中1位。4軸すべてが全業種平均(603件)を上回った
- それでも代替CV導線(CV-05)は平均32点で、80%が50点未満。tel:リンクがあるのは30件中5件
- サイト内検索(N-04)は平均51点、80%が50点未満。ページ数が多い業種だけに影響が出やすい
- 離脱防止施策(CV-06)は平均51点、47%が50点未満。長いページの中盤でCTAが視界から消える
- 弱点はいずれも技術面ではなくCV導線側にあり、トライアル導線に1本足す・固定CTAを1本入れるといった軽い改修で動かせる範囲
他業種との位置関係は20業種の総合スコア一覧にまとめています。






