本記事の数値について
20業種603サイトを同一基準で実測した、2026年9月12日時点の診断データに基づきます。以後の診断で母数は増えますが、本記事の数値は再集計せず固定しています。集計方法・採点基準・限界は調査方法と採点基準をご覧ください。
不動産会社のサイトを訪れる人は、たいてい何かを探している途中です。ポータルサイトで気になる物件を見つけて、扱っている会社を確かめにくる。エリア名で検索して、そこにどんな物件があるかを眺めにくる。いずれにしても、目的がはっきりした状態でやってきます。
この人にとって、サイトの役割は物件を並べることだけではありません。気に入った物件が見つかったあと、この会社に連絡してよいかを判断するという、もう一段の山があります。物件情報そのものはポータルサイトにも載っています。それでも自社サイトを見にくるのは、会社を見定めるためです。
私たちは603サイトを同一基準で診断しました。この記事では、そのうち不動産30サイトの集計値だけを扱います。個別のサイト名は出しません。
20業種中11位
平均より+0
平均より-4
診断サイト数
不動産の実測サマリー(2026年9月12日時点)
不動産30サイトの平均は総合55点。20業種中11位で、ちょうど真ん中あたりです。
| 評価軸 | 不動産(30件) | 全業種平均 |
|---|---|---|
| SEO | 55 | 55 |
| LLMO | 39 | 43 |
| 基盤 | 67 | 69 |
| UX | 60 | 62 |
| 総合 | 55 | - |
表① 不動産30サイトの4軸スコアと全業種平均
図① 不動産の4軸スコア。数字は「自業種/全業種平均・差」(2026年9月12日時点)。青緑=平均より3点以上高い軸、朱=3点以上低い軸
目立って崩れている軸はありません。ただし4軸すべてが平均と同じか、わずかに下回っています。特にLLMO(生成AIに情報を正しく読み取ってもらえるか)は39点で、全業種平均43点を下回りました。構造化データがまったく置かれていないサイトが30件中14件あったことが影響していると考えられます。
総合点は中位でも、個別の項目には極端に低い箇所が集中していました。
弱点その1:内見を頼みたい人が、その場で電話できない
最も低かったのはCV-05「電話・チャット等の代替CV」で、平均29点。50点未満のサイトが90%(30件中27件)にのぼりました。
問い合わせフォームは、ほぼすべてのサイトに置かれています。問題は、フォーム以外の連絡手段が用意されていないことです。実測では、電話番号をタップ1回で発信できる形(tel:リンク)にしていたのは30件中2件でした。番号は書いてあっても、画像やただのテキストとして置かれている状態です。
物件を見ている人の問い合わせは、多くが短い確認から始まります。「この部屋、まだ空いていますか」「今週末に内見できますか」。フォームに氏名と住所とメールアドレスを入力して、返信を待つ内容ではありません。しかも物件は一点もので、他社も同じ物件を扱っている可能性があります。返信までの数時間が、そのまま機会損失になります。
直し方は具体的です。
- 表示している電話番号をすべて
<a href="tel:0312345678">の形式に変える。ヘッダー、フッター、物件詳細ページ、店舗ページの4か所を必ず確認する - 電話を受けられる曜日と時間を番号のすぐ横に書く
- LINEやチャットなど、名前を書かずに一言だけ聞ける窓口を1つ足す。内見前の段階では、氏名を明かしたくない人が一定数います
業種ごとのtel:リンクの実装状況は電話番号を載せている275サイトの28%は、タップしても発信できないでも扱っています。
弱点その2:この会社に任せた人がいるのかが分からない
次に低かったのがC-07「事例・実績の見せ方」で、平均40点。50点未満が70%(30件中21件)でした。
物件情報は各社とも丁寧に作り込まれています。一方で、その物件を扱っている会社がこれまで何をやってきたかを示すページは、大半のサイトで手薄でした。会社概要に設立年と資本金が並んでいるだけ、というケースが目立ちます。
不動産の取引は、利用者にとって人生で数回しか経験しないものです。判断材料が乏しいまま、担当者と数か月付き合うことになります。だからこそ「自分と似た条件の人が、この会社を使ってどうなったか」が効きます。置くべき情報は、取引の種類ごとに変わります。
- 賃貸仲介:内見の申し込みから鍵の引き渡しまで何日かかるのか、初期費用の内訳の例
- 売買・売却:地域別の取扱実績、査定から成約までにかかった期間の目安
- 管理:受託している棟数や戸数など、数で言える範囲のもの
氏名や物件名を伏せたまま、条件と経過だけを書くことはできます。「30代・ご夫婦・沿線内での住み替え」といった粒度で十分に伝わります。
弱点その3:問い合わせた後に何が起きるか、書かれていない
3つ目はCV-03「CTA周辺の不安解消」で、平均38点。50点未満が67%でした。
問い合わせボタンや内見予約ボタンは設置されています。ただ、ボタンの周辺には「お問い合わせはこちら」としか書かれていないことがほとんどで、押したあと何が起きるのかが分かりません。
不動産の問い合わせで押しとどまる理由は、だいたい決まっています。営業の電話がしつこく続くのではないか。まだ検討初期だと伝えたら相手にされないのではないか。これらはボタンの色を変えても解消しません。直下に次の3つを短く添えるだけで印象は変わります。
- 返信の手段と時間の目安(「1営業日以内にメールでご連絡します」など)
- 押した後に何が起きるか(「その場で来店予約が確定するものではありません」)
- 検討段階でも歓迎であることの明示(「まだ具体的に決まっていない段階でも構いません」)
物件詳細ページのように同じテンプレートが何十ページにも展開される箇所は、1か所直せば全ページに効きます。
自社サイトがこの3項目でどのくらいの位置にいるかは、コンバージョン偏差値スキャナーにURLを入れれば、同業種の中での偏差値として確認できます。
強い部分
一方で、見た目の作り込みは高い水準にありました。SSL対応は平均100点、画像・ビジュアルの品質は平均91点、配色の一貫性・コントラストは平均88点です。物件写真を扱う業種だけあって、ビジュアル面の投資は行き届いていると考えられます。逆に言えば今回の弱点3つは、デザインの作り直しではなく情報の追加で埋められる部分です。
自社サイトではどう確認するか
次の4点を、すべてスマートフォンで確認してください。所要は10分程度です。
- トップ・物件一覧・物件詳細・会社概要の4ページで、電話番号を指でタップする。発信画面が出なければ`tel:`リンクになっていません
- 物件詳細ページを最下部まで見て、問い合わせ手段がいくつあるかを数える。1つしかなければ代替CVが不足しています
- 問い合わせボタンの周囲30文字を読む。返信の時期と手段がなければ、不安解消の情報が足りていません
- サイト内を「実績」「お客様の声」で検索し、該当ページと最終更新日を確認する
自社サイトで確認する手順
まとめ
- 不動産30サイトの総合は55点で20業種中11位。4軸すべてが全業種平均と同水準かわずかに下回る
- 最大の弱点は電話・チャット等の代替CVで平均29点。電話番号をタップで発信できる形にしていたのは30件中1件
- 事例・実績の見せ方は平均40点、70%が50点未満。物件情報は充実しているが会社の実績を示すページが手薄
- CTA周辺の不安解消は平均38点、67%が50点未満。返信時期や検討段階でよい旨が書かれていない
- いずれもデザイン改修ではなく、テキストとリンク形式の修正で対応できる範囲
他業種との位置関係は20業種の総合スコア一覧にまとめています。






